よくよく考えてみれば、恐ろしくいろいろなものが入っている“箱”だ。持っていないと不思議がられるほど普及した携帯電話のこと▼最近は特に多機能携帯電話、いわゆるスマートフォンの人気がうなぎ上りだとか。過日の報道によれば、二〇一〇年の世界の出荷台数は、実に前年比七割以上アップの三億台余に達している▼この種の電話には「アプリ」と略称される多彩な機能のソフトが多数入っており、それ以外も、各自で愛機に取り入れられるようだ。誰かの口まねをすれば「そういうことには疎い」が、とにかく、名の通り、賢い(スマート)電話らしい▼携帯電話の中には「お宝」も入っている。さまざまな産業に欠かせないレアメタル(希少金属)だ。使用済み携帯などの電子機器に眠るそれらの価値は何百億円ともいうから、「都市鉱山」の呼び方もあながち大げさではない▼ただ、現状では、そのまま埋め立て処分されるケースがほとんど。このため、それを取り出してリサイクルする制度の新設に向けた検討を中央環境審議会が始めたのだという。「もったいない」の国らしく、いい仕組みを考えたいものだ▼さらには、メールや写真の形で、使う人の「思い出」が入っているともいえるだろう。そう言えば、例の八百長問題では、とんでもない「秘密」も…。気軽に持ち歩いているが、つくづく大変な“箱”である。