毎年この時期が来ると、中学生や高校生の男の子はソワソワしたものだ。今年のバレンタインデーに僕はチョコレートをもらえるのか…。悶々(もんもん)としながら日々を過ごした▼いっそ休日と重なれば、惨めな思いをしなくて済むのにと嘆いたこともあるが、今となっては、懐かしい思い出だ。そんなほろ苦いバレンタインデー事情は、かなり様変わりしているらしい▼菓子メーカーの江崎グリコが、全国の女性六百人を対象に実施したインターネット調査の結果が興味深い。今年、チョコを贈る予定(複数回答)は「女ともだち」が72%でトップ。「彼氏」は34%、「告白したい男性」は18%にとどまった▼とりわけ、中学生と高校生は九割以上が「女ともだち」と回答しているのが目を引く。中高校生の女の子の間では、お互いの友情を確かめ合う手づくりの「友チョコ」がブームになっているのだそうだ▼チョコを一つももらえなくて打ちひしがれる男の子の気持ちは少しは軽くなるかもしれない。でも、友チョコをもらえるかどうか、女の子が小さな胸を痛めることになるならそれもまた悲しい▼<男ではなくて大人の返事する君にチョコレート革命起こす>。恋には大人の返答など要らないと、チョコを渡したい相手への強い思いを歌った俵万智さんの切ない短歌だ。女同士で贈り合う友チョコ世代にはどう響くだろうか。