HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Sun, 06 Feb 2011 21:09:02 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:なまくら包丁を自分で研いでも切れ味が戻らないので、一本数百…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2011年2月6日

 なまくら包丁を自分で研いでも切れ味が戻らないので、一本数百円で研ぎに出した。ピカピカになって戻った包丁は力を入れなくても肉や野菜がすっと切れ、料理が一層楽しくなった▼ふと、茨木のり子さんの有名な詩が浮かんだ。<ぱさぱさに乾いてゆく心を/ひとのせいにはするな/みずから水やりを怠っておいて><自分の感受性くらい/自分で守れ/ばかものよ>▼惰性が忍び込むと、素直に感動できなくなる。心がなまくら包丁のように干からびるのは、新しいことに挑戦する気概を失っているからだろう。刺激的な<ばかものよ>は茨木さんが自身に向けた言葉と分かっていても、自分に引きつけて考えさせる▼十一年前、七十三歳の茨木さんが発表した『倚(よ)りかからず』に「時代おくれ」という詩がある。<車がない/ワープロがない/ビデオデッキがない/ファックスがない/パソコン インターネット 見たこともない/けれど格別支障もない/そんなに情報集めてどうするの/そんなに急いで何をするの/頭はからっぽのまま>▼今や携帯電話に代わって、より機能的なスマートフォンの時代。就職活動に欠かせない「武器」だと学生に大人気だ▼茨木さんが亡くなってから、間もなく五年になる。大学で勉強する時間さえ奪われ、就活に翻弄(ほんろう)されている今の学生の姿を見たら、詩人は何を思うだろうか。

 

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