一月下旬からの霧島連山・新燃岳(宮崎、鹿児島県)の噴火で、住民の不安が高まっている。噴火そのものは人力でどうにもならないが、関係機関の協力を密にして被害を最小限に抑えたい。
国の火山噴火予知連絡会は「今後一〜二週間は爆発的噴火を繰り返す」と発表したが、経過は予断を許さず、いかなる事態にも備えを怠るべきではない。
現在の被害は、大量の火山灰降下と噴火に伴う空振が中心で、噴石も飛来した。
降灰は建物に侵入したり、農作物などの被害のほか、視界が悪くなり、降雨で道路がぬかるみ、スリップによる車の事故を多発させる。速やかな除去、とくに路面の清掃に努めたい。
空振により建物の窓ガラスが割れ、けがをした事例が相当伝えられている。ガラスが割れたり、破片の飛散を防ぐため、テープを貼ったり雨戸を閉めるのは、どこでも簡単にできる。
だが火山の噴火による災害で最も恐ろしいのは、数百度の高温の火山灰、岩石などと、ガスが時には時速百キロの高速で地表を流れる火砕流と、山腹や川に堆積した火山灰や石などが降雨で一気に押し流される土石流だ。
一九九一年六月発生した雲仙・普賢岳の火砕流が、四十人を超える死者・行方不明の犠牲を出したのはまだ記憶に鮮明だ。新燃岳は火口付近がすりばち状である。予知連絡会は、火砕流は火口から三キロ以内にとどまると予測するが、不測の事態を否定しきれない。
山頂付近や山腹の上部には、火山灰が積もったと推測され、雨があれば泥流となり、急激に土石流を誘発する恐れがある。警戒が必要なことは当然である。宮崎県高原町が一月末、いち早く一部地区住民に避難勧告を出したのは、杞憂(きゆう)とはいえない。
ただし、火砕流も土石流も標高の高いところから沢筋を下り、低地の川に流れるのが原則である。噴火で変化する地形を継続的に観察しておれば、流れの方向や範囲は把握できる。やみくもに不安をあおることはない。
時々刻々と変わる噴火の状況、地形を常時監視する研究者ら専門家、危険地域の住民に避難勧告など対応策をとる行政機関、とりあえず安全な地域で火山灰その他の堆積物の除去に当たる地元の実情をよく知った建設業者らの情報の共有をはじめ緊密な連携が、このような緊急事態の被害を最小にとどめる鍵となろう。
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