百円玉より少し大きいくらいのコーンフレークのかけら、一つ。さて、一体いくらの価値があるだろう▼いや、そもそも価値なんてあるのか。だが、三年ほど前、米国では、ネットオークションで日本円にして実に十三万円で落札されている。イリノイ州の形にそっくり、というのが高値の理由だった▼何に似ていようと所詮(しょせん)はコーンフレークのかけら。百円だって出す気はないという人が多かろう。だが、ほしい人には宝。而(しこう)して驚くような値がつく。ものの価値というのはなかなか面妖なものである▼ネット上のゲームでいう「アイテム」とは、ゲーム内で自分の分身が手に入れる武器や装飾品などのことだ。最近、それを不正アクセスで盗み、転売して荒稼ぎする輩(やから)が増えているらしい。入手が難しいものだと、ウン十万円もの値がつくというから驚く▼もっとも、現行法解釈ではアイテム泥棒を即、盗みなどの犯罪として立件することは難しいようで、警察も苦労している。だが、今やゲーム通貨も合わせた闇売買の市場は数百億円規模。海外では犯罪組織が麻薬取引などの資金をアイテムなどに置き換え、資金洗浄する例まであるという▼ネットゲームの門外漢には正直、あのコーンフレーク同様、その価値は理解できない。だが、仮想の財産が現実の価値を持ち始めた以上、法解釈も考え直さなくてはなるまい。