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2月5日付 編集手帳

 折句という言葉遊びがある。在原業平「かきつばた」の一首は知られている。(か)唐衣(からころも)(き)きつつなれにし(つ)つましあれば(ば)はるばるきぬる(た)旅をしぞ思ふ――一語を分解して、句の頭に置く◆人名の折句もある。〈(お)大きなカバンに英語の本(だ)大学町の一隅で(し)じっくり訳した沙翁(さおう)劇(ま)枡目(ますめ)に写す三昧境(さんまいきょう)(ゆ)夕べになれば劇場に(う)うれしく足を向ける人(し)しかもそれから夜の酒〉◆作家の故・戸板康二さんが友人の英文学者、小田島雄志さん(80)を詠んだものである。翻訳を通して沙翁シェークスピアの文学と演劇を世に広めた功績のみならず、洒脱(しゃだつ)な人柄までもにじませて見事というほかはない◆小田島さんが今年の読売演劇大賞・芸術栄誉賞に選ばれた。「世に()る、世に在らぬ」と坪内逍遥が訳した『ハムレット』の「To be or not to be」を小田島さんは「このままでいいのか、いけないのか」と訳した。小田島訳の平明な日本語によってシェークスピアに親しんだ人は多かろう◆折句にある「枡目に写す三昧境」の、末永からんことを。

2011年2月5日01時20分  読売新聞)
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