HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 38645 Content-Type: text/html ETag: "16b2e9-168e-c30ce840" Expires: Wed, 02 Feb 2011 21:21:37 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Wed, 02 Feb 2011 21:21:37 GMT Connection: close エジプト危機 混乱収拾へ政権移行を急げ : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
現在位置は
です

本文です

エジプト危機 混乱収拾へ政権移行を急げ(2月3日付・読売社説)

 もはや速やかな退陣しか、道は残されていないのではないか。

 連日膨れあがる一方の退陣要求デモに直面してエジプトのムバラク大統領が、9月に予定される次期大統領選への不出馬を宣言した。30年の独裁に終止符を打つ事実上の退陣表明である。

 だが、これでデモが収まる気配はない。大統領支持派と反大統領派との衝突が新たに起きるなど、混乱はむしろ広がった。大統領は重大な決断を迫られている。

 大統領は、腹心のスレイマン情報庁長官を副大統領に任命し、野党勢力との対話開始を指示した。野党候補の大統領選出馬を阻んできた憲法の改正も約束した。

 だが、譲歩は遅きに失した感がある。事態は大統領の思惑をはるかに超えて、急進展している。

 オバマ米大統領は「秩序ある権力移行」に直ちに着手するよう求めた。引導を渡した形だ。

 政権の支柱である軍も、「平和的なデモに銃は向けない」と、大統領とは距離を置く姿勢だ。

 治安部隊とデモ隊の衝突で、これまでに約300人が死亡したとされる。経済もまひしている。

 これ以上の流血と混乱は避けなければならない。現政権側と野党勢力は、協力して平和的な政権移行に取り組むべきだ。

 民主的で公正な次期大統領選が実施できるよう、政治活動の自由も保障する必要があろう。

 野党勢力の中で、組織らしい組織を持つのは、イスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」だけだ。野党間の足並みも、そろっていない。野党勢力の統合を試みているエルバラダイ前国際原子力機関事務局長も、求心力に欠ける。

 平和的な政権移行へ、前途は険しいと見ざるを得ない。

 エジプトの危機は、独裁を続ける中東の他の首脳に改革を促している。イエメンでは、大統領が続投や息子への権力継承を否定し、ヨルダンでは、国王が首相を交代させ、改革推進を指示した。

 アラブ諸国で初めてイスラエルと和平条約を結んだエジプトは、中東地域の安定の要である。

 だが、エジプトの政権移行が中東地域の不安定化につながるのではないか、という懸念が、欧米諸国やイスラエルにはある。

 国民の反イスラエル感情は依然として根強く、ムスリム同胞団が台頭すれば、和平条約を見直す恐れがあるというものだ。

 そうした不安を払拭する努力も政権移行期のエジプトには求められている。

2011年2月3日01時01分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
現在位置は
です