ついに、と言うべきだろう。大相撲ののど元に八百長問題が突きつけられた。一貫して否定してきた相撲界だが、今度こそ真摯(しんし)にこの暗部と向き合わない限り、大相撲の将来はない。
大相撲の野球賭博事件の捜査はさらに深刻な問題を明るみに引き出した。八百長である。幕内、十両力士らが、日常的に勝ち星を売り買いしていたことをうかがわせるメールの記録が明らかになったのだ。警察の捜査による証拠の存在は重い。これまでのように、うやむやのまま終わらせるわけにはいかない。
日本相撲協会は八百長の存在を徹底して否定してきた。元力士による告発や週刊誌の調査報道が相次いでもいっさい認めず、損害賠償を求めて提訴もしてきた。が、その「八百長などない」という主張についに穴があいたのである。これで、頭から否定を繰り返してきた相撲界の信用は完全に失墜するだろう。国技ともいわれる大相撲を根底から揺るがす出来事と言わねばなるまい。
ことは野球賭博事件以上に深刻だ。相撲協会は真正面からこれに向き合わなければならない。どんなに打撃が大きかろうと、徹底調査ですべてを明らかにする義務がある。八百長は相撲そのもの、その魅力そのものを踏みにじる行為だからだ。
力士暴行死事件、横綱朝青龍(引退)をはじめとする有力力士たちの不祥事、そして野球賭博と、近年の大相撲は長い歴史と伝統を汚す出来事ばかりを繰り返してきた。新たなスターの不在もあって、観客は減る一方だ。今回の八百長問題で人気はさらに落ちるだろう。相撲協会が目指してきた公益財団法人への移行にも重大な影響を及ぼすに違いない。
だが、そうした事態を恐れている場合ではない。中途半端な対応はイメージダウンを増幅する。八百長が事実であれば、その全容を明らかにし、しかるべき処分を行い、再発防止の態勢を整えたうえで再出発するほかに道はない。大相撲を新しくつくり直す覚悟が見えなければ、そっぽを向いたファンは戻ってこないだろう。
相撲界はその閉鎖性、独善性ゆえに、問題が起きてもまず隠ぺいに走り、正面から取り組んで改革していく姿勢をほとんど見せてこなかった。そのツケがいま、いっせいに噴出しているのである。大相撲は国民の大事な財産なのだ。もう隠してはならない。もう逃げてはいけない。
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