サッカーのアジア・カップで日本が四度目の優勝を果たした。海外メディアは「サムライ」とたたえ、私たちも胸を張れる。決勝ゴールを決めたのは在日韓国人で日本国籍を取得した李忠成選手だ。
三十日未明、決勝の対オーストラリア戦。延長後半4分、李選手が左足で強烈なボレーシュート。優勝が決まった瞬間だ。
李選手は東京都西東京市出身の在日四世。試合後、韓国メディアの取材にこう答えた。「僕は韓国人でも、日本人でもなく、サッカー選手としてここにいる」
このひと言には、プレーヤーとして国の壁を乗り越えた、という強さと誇らしさを感じる。
七年前、李選手がまだ韓国籍だったころU−19(十九歳以下)韓国代表チームの候補になったが、自身が祖国に適応できず代表から漏れた。韓国各紙によれば、韓国語がうまくできないため、いじめを受けたのも一因だという。
「Jリーグで飯を食べていく」と四年前に日本国籍を取得した。その直前、韓国・大邱にある先祖の墓参りに行き「頑張るので見守ってください。李という姓は、最後まで守ります」と誓った。選手登録名は「り・ただなり」だが、本名は「イ・チュンソン」。父とは「堂々と本名を名乗って、日本のために頑張る在日がいてもいい」と話し合ったという。
サッカーの国際試合ではファンは国歌を斉唱し国旗に敬礼する。試合は国の威信をかけた熱い戦いになる。それでも、選手にとっては、自身が最高のプレーをしてチームが勝つことが一番の目標であるはずだ。
在日コリアンで別の道を選択した者もいる。三世の鄭大世(チョンテセ)選手。韓国籍だが、国際サッカー連盟(FIFA)の特例を受け昨年のサッカーワールドカップ(W杯)に北朝鮮代表として出場した。W杯では英語も交えて各国メディアの取材に応じ、北朝鮮が目指すサッカーをアピールした。
欧州では東欧やアフリカ移民の二世、三世が国家代表チームに何人もいる。一九九八年W杯でフランスを優勝に導いたジダン選手はアルジェリア移民の子だ。
Jリーグにいる在日コリアンの選手たちは体力、突破力に優れている。ブラジル国籍から帰化した選手は華麗な個人技をみせる。
日本というチームの中で、いろいろな民族の血を引く選手がその国特有のプレーを見せてくれればサッカーはもっと面白くなる。
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