東京のJR山手線目白駅で全盲の男性が転落死した事故で、JR東日本はホームの点字ブロックの改修を決めた。目の不自由な人にとっては朗報だ。ホーム事故の根絶へ向けた一歩としたい。
転落事故が発生した十六日から二週間足らずでの発表だった。なぜ落ちたのか原因がはっきりしない中でのJR東の素早い決断を評価したい。
今のホームの端にある点字ブロックは、ほぼ十年前に敷設された。当時の国の指針に従ったとはいえ、旧式のタイプで工事のやり方がひどく、突起が分かりづらい。全盲の人たちからはそんな声が出ていた。
発表では、その点字ブロックを日本工業規格(JIS)にのっとった新しいタイプにすべて取り換えるという。判別しやすい点状の突起に加え、ホームの内外を知らせる線状の突起がついたタイプだ。大急ぎで工事をしてほしい。
東京、神奈川、埼玉、千葉の四都県にある約三百三十駅でも、ホームの点字ブロックがきちんと機能しているかどうか調べるという。目の不自由な人たちが出入りする学校や施設が付近にある駅を優先するという考えには賛成だ。
だが、心配もある。工事や点検をする人たちは点字ブロックの知識や技術を持ち合わせているのか。目の不自由な人たちは現場に立ち会うのか。調査は一度きりで定期的にやらないのか。
大金をつぎ込んでも、視覚障害者にとって役目を果たさなければ意味はない。JR東をはじめ全国の鉄道会社はそのことを肝に銘じ、小まめにチェックする仕組みを整えてほしい。
ホームでは本来、障害の有無にかかわらず、すべての乗客の安全が保たれるべきだ。毎日のように電車が止まったり、遅れたりしている。線路に落ちたり、電車と接触したりする原因は危険なホームにあるのではないか。
社会の高齢化が進めば、多かれ少なかれ障害がある人が増えるのは明らかだ。視力が衰えたり耳が遠くなったりする。足元がおぼつかなくなり、つえや車いすを使う姿も多くなろう。鉄道会社はますます障害のある乗客の対策に取り組むことになる。
ホームドアや可動式のホーム柵はそんな乗客の安全を守るだけではない。鉄道会社にとってはダイヤの乱れを防ぎ、輸送コストを抑える有効な手だてとなる。点字ブロックの改修はそのための一つのステップと考えたい。
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