HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 37752 Content-Type: text/html ETag: "add38-167e-edc08dc0" Expires: Sun, 30 Jan 2011 02:21:43 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sun, 30 Jan 2011 02:21:43 GMT Connection: close イレッサ訴訟 国は副作用死の教訓を生かせ : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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イレッサ訴訟 国は副作用死の教訓を生かせ(1月30日付・読売社説)

 肺がんの治療薬「イレッサ」の副作用で死亡した患者の遺族らが損害賠償を求めた訴訟で、被告の国と輸入販売元の製薬会社は、大阪、東京両地裁の和解勧告を拒否した。

 両地裁は、それぞれ2月と3月に判決を言い渡すことになる。

 和解による早期解決を求めていた原告の患者、遺族にとって、国などの対応は認めがたいものだろう。薬事行政への影響などを懸念する国にとっても、苦渋の選択だったといえる。

 イレッサは、「副作用の少ない夢の新薬」といわれた錠剤で、2002年7月、世界に先駆けて日本で販売が始まった。申請から5か月のスピード承認だった。

 その際、添付文書の「重大な副作用」の4番目に致死性の肺炎が記されていたが、実際に副作用死が相次いだ。このため、厚生労働省は同年10月、緊急安全性情報を出し、肺炎の副作用を「警告欄」に記載するよう改めた。

 両地裁は、和解勧告の所見でこの点を重視した。緊急安全性情報が出されるまでにイレッサを飲んで肺炎を発症した患者について、「国と製薬会社に救済責任がある」と指摘した。

 これに対し、国は「適切な注意喚起を行った」と主張しているが、警告欄に記された後、死亡者が減少に向かったことも事実だ。副作用情報の提供が十分だったのかどうか、検証が必要である。

 国が和解を拒否した最大の理由は、副作用を重視し過ぎると、抗がん剤などの迅速な承認の妨げになる、との懸念があるためだ。

 だが、医薬品の承認を優先するあまり、安全性のチェックをおろそかにすることは、薬事行政上、あってはならない。

 厚労省は「がん治療の新薬について、安全性を確保しつつ、できる限り早期の導入につなげていくことが大切」との見解を示した。患者のために、それを実践していくことが肝要だろう。

 日本では、欧米で評価された医薬品全般についても、承認が遅れ、治療に使えない「ドラッグ・ラグ」が問題となっている。その解消も急務だが、やはり安全性への十分な配慮は欠かせない。

 これまで抗がん剤は、副作用と死亡の因果関係の判定が難しいという理由から、現行の副作用被害救済制度の対象外とされてきた。国は、その見直しについても検討するという。

 新薬承認と副作用情報提供のあり方が問われたイレッサの教訓を今後の薬事行政に生かしたい。

2011年1月30日02時57分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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