HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 37993 Content-Type: text/html ETag: "a19ef-1692-edc08dc0" Expires: Sat, 29 Jan 2011 21:21:37 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sat, 29 Jan 2011 21:21:37 GMT Connection: close エジプト騒乱 改革の遂行以外に安定はない : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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エジプト騒乱 改革の遂行以外に安定はない(1月30日付・読売社説)

 アラブ随一の大国エジプトで、30年に及ぶ独裁を続けてきたムバラク大統領の退陣を求めるデモが先鋭化している。

 首都カイロや北部のアレクサンドリアなどで始まったデモは各地に広がり、治安部隊との衝突で多数の死傷者が出た。警察署や政権与党の本部が放火され、夜間外出禁止令も無視された。

 「権力者に従順だ」といわれていた国民を、ここまで激しい行動に駆り立てたのは、強権政治への強い怒りだろう。

 ムバラク大統領は全閣僚の更迭を発表し、新内閣を発足させて事態収拾を図る方針を表明した。民主化や経済改革の推進を約束する一方、自身の退陣は否定した。

 街頭には軍隊も出動している。何としてもデモを鎮静化させるつもりだろう。だが、力による封じ込めは一時しのぎに過ぎまい。

 高い失業率、物価高騰、貧富の格差、権力層の腐敗など社会への強い不満が根底にはある。

 言論の自由が制限される中、大統領の次男を後継者に据えるという「世襲」に向けた動きも出ていた。形だけの民主主義への反発が一気に噴出した形だ。

 23年続いた独裁体制が反政府デモを契機に倒れたチュニジアと同じ病根が見て取れる。

 人口で約8倍、8000万人超のエジプトで政変が起きれば、独裁が続く他のアラブ諸国に大きな影響を及ぼそう。中東情勢が一気に不安定化する恐れもある。

 ムバラク大統領は、改革の具体案を提示して実行に移すべきだ。次期大統領選への不出馬宣言を行わなければ、事態収拾は難しいとの見方もある。

 オバマ米大統領がムバラク大統領に電話し、改革の実行を強く促したのも、エジプトの不安定化を阻止したいからだろう。

 エジプトはアラブの盟主を自任し、米国の中東戦略で重要な位置を占めている。

 アラブ諸国で初めてイスラエルと和平条約を結んだエジプトは、イスラエルとパレスチナの和平交渉でも仲介役を果たしてきた。

 エジプトには現政権に代わる受け皿がないという問題もある。エルバラダイ国際原子力機関前事務局長が帰国したが、反政権グループをまとめられる保証はない。政変を機にイスラム原理主義が台頭することも懸念されている。

 日本は石油の約9割を中東に依存している。中東の安定化のためにも、日本を含め国際社会は、アラブ諸国に民主的な改革を一層促していく必要があるだろう。

2011年1月30日02時57分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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