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冬の夕餉(ゆうげ)の楽しみにブリ大根がある。生臭みを消す湯通しやアク取りの手間と引き換えに、頭やカマのうまみが仕事をしてくれる。ご飯によし燗酒(かんざけ)によしの総菜は、味が染み込む翌日がまたおいしい▼ソムリエの田崎真也さんによると、この魚には赤ワインも合う。ブリ大根なら、やや軽めで熟成が進んだもの、照り焼きは粉山椒(こなざんしょう)のようなスパイス香を備えたものと相性がいいそうだ。〈寒鰤(かんぶり)を煮る幸せや永らえて〉原田マサ恵▼この海の幸が空前の豊漁という。定置網の水揚げが去年の数十倍という港もあり、平年の半値ほどで売られている。ブランド産地、富山県氷見(ひみ)市の学校では給食に塩焼きが出た。こういう地の利はうらやましい。大漁の前には、氷見産を装う品も出回った▼ブリはオホーツク海から台湾あたりを回遊する。この冬、産地の富山湾や若狭湾で魚影が濃いのは、強く張り出した寒気ゆえという。産卵のため日本海を南下する寒ブリの群れが、低温の海域を嫌って沿岸に近づいたらしい▼背の青緑に、黄の帯を挟んで腹の銀白。厳冬の日本海に染められた魚が網の中で輝き、身をくねらす。ひと抱えはある20キロ級の大物もまじるという。寒の恵みを求め、こちらも近所の鮮魚棚を回遊する日が続きそうだ▼日本海側は、これまた記録的な大雪に泣かされている。お年寄りが守る家では、除雪中の災難が絶えない。このブリ景気、冬将軍が空の不始末を海で埋め合わせているのだろう。雪国の労苦を思い、四季と四海に謝し、出世魚にお供すべき今宵(こよい)の一献を選ぶ。