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尖閣沖漁船衝突 事件を総括し危機対応見直せ(1月22日付・読売社説)

 尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件と、元海上保安官によるビデオ映像流出事件の捜査は、元保安官と中国人船長がともに不起訴(起訴猶予)となることで終結した。

 中国人船長の逮捕から釈放、さらにビデオ流出に至る過程で、政府の対応には極めて問題が多かった。これを機に、政府は事件全体を総括し、危機対応や情報管理の見直しを進めねばならない。

 検察当局が、国家公務員法の守秘義務違反の疑いで書類送検されていた元保安官を不起訴にしたのは、問題の映像が海上保安庁のずさんな管理により、海保職員なら誰でも見られる状態にあった点などを考慮したためだ。

 元保安官が停職12か月の懲戒処分を受け、既に辞職したことも影響したのだろう。

 日本の領海内で海保の巡視船に体当たりした中国漁船の違法行為は、疑う余地がなかった。にもかかわらず政府は、事件直後に映像を公開せず、日本側の正当性をアピールする機会を逃した。

 その後もビデオの一般公開を拒み続け、結果として元保安官によるビデオ流出を招いた。

 政府の判断ミスは明白だ。

 仙谷由人前官房長官と馬淵澄夫前国土交通相は参院で問責決議を可決された。両者の更迭を求める野党の姿勢を、政治のけじめなしでは済まされない、という世論が支えたと言える。

 情報管理態勢の整備を急ぐことは言うまでもない。ビデオ映像流出が示す通り、ネット上で情報が瞬時に拡散する時代である。情報の取り扱いに関する公務員の倫理教育も徹底すべきだ。

 一方、中国人船長については、検察は衝突で負傷者が出なかったことなどを不起訴理由に挙げた。だが、処分保留のまま釈放し中国に送還した時点で、刑事罰は問わないとの結論を事実上出していたというのが実情だろう。

 釈放の経緯は不透明なままだ。政府は検察独自の判断だったと説明しているが、日本人社員の拘束など中国側の圧力で政治決着が図られたことは間違いあるまい。

 司法の独立に対する不信感を国民に与えたことを、政府は深刻に受け止めてもらいたい。

 無論、海保による領海警備も強化する必要がある。

 漁船衝突事件は、外交・安全保障の面で、様々な課題を突きつけた。外洋進出を強める中国との関係を今後どう築いていくのか、政治的な観点からも事件を教訓にした検討が改めて求められよう。

2011年1月22日01時20分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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