昨年の新語・流行語大賞で、六十の候補が発表された時、これだけは大賞、つまり一位になると据わりが悪いと、勝手に思った言葉がある▼それは、事業仕分けで、性能世界一を目指すという次世代スパコンの開発費が問題になった際、当時、仕分け人だった蓮舫大臣が放った一言。「二位じゃダメなんですか」▼資源なき国で科学技術の力は宝。それに、無自覚だと批判の声が上がったが、文脈を離れて流用されるのが流行語だ。例えば、予想通り、昨年の国内総生産(GDP)で中国が、これまで二位の日本を抜くのが確実になったという話題なら、こう使う。「三位じゃダメなんですか」▼文化財発掘にたとえれば、経済成長とは、掘り出す土の量のようなものだ。中国は今、盛んに重機を使っているところ。対して、日本は軍手をはめて小さなシャベルで土をほじくるしかなくなっている▼荒々しく掘れたころとは違い、仕事はどんどん繊細で困難になり、除ける土量はわずか…。だが、目的は埋蔵物で土を掘ることではない。中国など新興国もいずれは重機を止め、日本が今、味わっているのと同じ苦労を順繰りで味わうことになろう▼リッチになるのは難しい。だが、エレガントになるのはもっと難しい。多分、GDPが世界何位かなんて、誰も気にしなくなってからだ。軍手の指先が“宝物”を探り当てるのは。