JR東日本の全新幹線が十七日にストップしたトラブルは、運行管理システムの能力を超える情報があふれたためだった。改善を怠ってきた判断は甘い。これを機に安全管理を徹底してほしい。
雪のために福島県内の東北新幹線の駅でポイントが切り替わらなくなったのが発端だ。運行管理システム「COSMOS(コスモス)」に列車を停止させるようデータを入力したところ、運行本部指令室のモニター表示が断続的に消えた。システムの不具合と誤解して、東北、上越、長野などJR東の五つの新幹線で、全面的に列車を停止させる事態となった。
だが、システム自体の故障ではなく、更新されるダイヤ情報が、一分間で六百件という上限を超えたためだったことが判明した。
また、この上限については、現場の担当者に伝えられていなかった。「現場の指令員に伝えると、上限を気にしながら作業することになる。上限を意識させないシステムの設計思想にした」という同社の判断だった。
「コスモス」は一九九五年に導入されたが、むしろ「余裕があるシステム」と過信したことに、原因が認められよう。
導入から十六年もたち、列車本数は四割以上も増えていた。それなのに能力不足の改善をしてこなかった経営判断は、甘いと言われてもやむを得ない。
約八万人の足に影響が出たトラブルではあったが、むしろこれを教訓として、安全運行にかかわる総点検を急いでもらいたい。
二〇〇八年にも「コスモス」に規定外の入力をしたことで、トラブルが起きている。今月には栃木県内で架線が切れたが、目視検査で劣化に気付かなかったためだとみられる。昨年にはJR東海の東海道新幹線で、ボルトの付け忘れによる架線切れがあった。
小さなトラブルを見過ごし、大事故を引き起こすことは、飛行機事故などで、しばしば指摘される。どんなトラブルでも情報を集約して、一つ一つ見直していくことが大事だ。列車運行のさまざまな現場で、安全管理のノウハウがきちんと伝承されているかどうかも再チェックが必要だ。
新幹線は海外に売り込みを図っている日本の優れた技術である。定時運行が徹底され、その安全性には高い評価がある。トラブルが重なれば、公共交通機関として信頼は損なわれ、海外の高速鉄道との競争にも勝てなくなろう。
この記事を印刷する