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チュニジア政変 独裁体制崩した国民の不満(1月19日付・読売社説)

 北アフリカのチュニジアで、23年に及ぶベンアリ大統領の独裁体制が崩壊し、次期大統領選までの暫定政権が発足した。

 アラブ諸国では安定しているとみられていた体制の、あっけない幕切れである。

 大統領は国外に逃亡したが、首都では銃撃戦がまだ散発的に起きている。暫定政権にはまず、速やかな治安の回復が求められる。

 体制崩壊の口火となったのは、道端での野菜売りを警官に禁じられた青年が抗議の焼身自殺を図ったことだった。事件は携帯メールなどを通じて瞬時に広まった。

 仕事にもつけず、食料品の高騰に不満を抱く若者らが抗議デモを行い、これに警官が発砲して多数の死傷者が出たため、国民のさらに強い反発を招いた。

 インターネットで大統領一族の贅沢(ぜいたく)な生活ぶりや利権(あさ)りが暴露されていたことも、火に油を注いだ。ネット時代特有の情報伝達が独裁を倒したともいえよう。

 地中海沿岸のチュニジアは人口1000万余の小国ながら、カルタゴ時代の遺跡など観光資源が豊富で、欧米や日本の観光客をひきつけてきた。欧州連合(EU)と自由貿易協定を結び、資本誘致にもある程度成功していた。

 ベンアリ政権は、欧米の価値観と相()れないイスラム原理主義勢力も強権で抑え込み、欧米諸国からは「アラブの優等生」とみなされてきた。しかし、言論の自由や反体制活動は認めず、複数政党制も選挙も形だけのものだった。

 暫定大統領には下院議長が就任し、60日以内に大統領選が実施されることになっている。暫定内閣には野党からも入閣し、挙国一致の体裁が一応整えられた。首相は言論統制機関だった情報省の廃止や政治犯の釈放を約束した。

 だが、主要閣僚はベンアリ政権の与党が占めたままだ。暫定内閣に不満を抱く国民はなお多い。

 長年の独裁で国内には形ばかりの野党勢力しか育っていない。民主的な体制を築くには、それなりの時間も必要になる。

 アラブ世界では、民衆の抗議行動が引き金となって政権が崩壊した例は、過去にはなかった。

 王制と共和制の違いを問わず、アラブ諸国には長期独裁政権が多い。政権の腐敗も進んでいる。それだけに、指導者たちは今回の政変の波及を恐れ、神経をとがらせていると言われる。

 民衆の反乱を避けるためには、言論統制の撤廃、汚職の追放、貧困者対策など、指導者自らが改革に着手するしかないだろう。

2011年1月19日01時21分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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