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1月19日付 編集手帳

 役者は、自分の演じる人物がドラマの最後にどうなるかを知っている。たとえば交通事故で死ぬことを知っている。だからといって事故に遭う前の晩、一家団欒(だんらん)の場面で悲しい表情をしたら興ざめである◆「演出家の仕事とは、自分の人生の最後を知っている役者に、その最後を忘れさせ、〈いま〉を生き生きとさせることです」――和田勉さんはそう語った◆俳優の丹波哲郎さん、脚本家の向田邦子さんとの鼎談(ていだん)で、「演出家の言うことを聞いていたら役者はうまくならない」という丹波説に反論しての発言である。演じる者、演出する者の散らす(きょう)()の火花がまぶしい(岩波現代文庫『向田邦子シナリオ集4』巻末付録より)◆〈いま〉を生き生きとさせる和田演出からは『天城越え』『心中宵庚申(しんじゅうよいごうしん)』など数々の名作ドラマが生まれている。NHKでは「芸術祭男」の異名を取り、テレビドラマとともに半生を歩んだ和田さんが80歳で死去した◆顧みれば、鼎談の丹波さんも、向田さんも、もういない。個人的な感慨を許してもらえば、テレビドラマが「鑑賞」から「追憶」の対象に変わったのは、いつだろう。

2011年1月19日01時21分  読売新聞)
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