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天声人語

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2011年1月16日(日)付

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 小鳥の情愛はなかなか深い。例えばシジュウカラは、雛(ひな)を天敵から守るため、鳴き声を使い分けているらしい。立教大院生の鈴木俊貴さん(27)が、21組の親子の実験で突き止めた▼剥製(はくせい)のカラスを巣箱に近づける。親は外からチカチカと鳴いて知らせ、雛はカラスのくちばしが届かない底に身を潜めた。次は透明の箱に入れたヘビ。親の声はジャジャと濁り、雛たちはまとめて丸のみされぬよう巣を飛び出したという。まさか「地下地下」「蛇蛇(ジャジャ)」ではなかろうが、弱者なりの知恵に驚く▼どの子も救おうと声をからす親と、けなげに聞き分ける子。金子みすゞの「雀(すずめ)のかあさん」がチクリとくる。〈子供が子雀つかまへた。その子のかあさん笑つてた。雀のかあさんそれみてた。お屋根で鳴かずにそれ見てた。〉▼そのスズメに一人っ子が増えているという。こちらは岩手医科大などの研究だ。去年の繁殖期、全国の愛好家に雛の数を調べてもらうと、商業地で平均1.4羽、住宅地が1.8羽、農村部でも2羽だった。4〜5羽も珍しくない鳥だから少子化である▼都会ほど瓦ぶきの家が減り、広い巣を作れる場所が減ったせいらしい。国内のスズメは20年で半減したともいわれる。この鳥の親も懸命に鳴き分けて、1羽2羽を守っているに違いない▼小さきものたちの大きな愛を知るにつけ、保護者の顔をしたカラスやヘビに育てられる子を思う。しつけに名を借りた虐待を前に、被害児は泣き分けるすべを知らない。せめて隣家から漏れ来る「子苦子苦(シクシク)」の声を聞き分けたい。

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