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天声人語

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2011年1月15日(土)付

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 NHKドラマ「坂の上の雲」で、明治の言論人、陸羯南(くが・かつなん)を佐野史郎さんが演じていた。その陸と、やはり論客の徳富蘇峰を比べた小欄を、先輩筆者だった深代惇郎が書いている▼長い目で見れば論調が首尾一貫と言えないのは両人とも同じだった。だが蘇峰はしばしば「変節」を言われ、羯南にはそうした非難はなかった。この違いを評して、言論人で哲学者の三宅雪嶺が言ったそうだ。「羯南は私心によって説を変えたのではないことが明白だったからではないか」▼「心変わりにも人徳(の有無)があるらしい」と筆者はコラムを締めている。さて、たちあがれ日本を離党して入閣した与謝野経財相である。心変わりに「人徳」はありやなしや。この人事、菅内閣のみならず、日本丸の行方も左右しかねず侮れない▼年齢から見て、ご本人には「最後の奉公」の念があろう。だが民主党を鋭く批判してきた舌の根は、いつの間に乾いたのか。曲折への十分な説明がまず欠かせまい。私心が透けるなら国民の目には、やはり政治は信を置けぬ代物と映るだろう▼「明日(あす)」と題する詩が与謝野氏の祖母晶子にある。憧れの明日はやがて〈平凡な今日に変り、灰色をした昨日になってゆく〉と嘆く。どこか国民が民主党にゆだねた「明日」の、これまでの末路を思わせる▼詩の中で晶子は、それでも明日に夢を抱く。そのお孫さんが閣内で、税や社会保障など私たちの明日に向けた要職を担う。仕事ぶりと結果が疑義への答えとなろう。六分の不安、四分の期待で見守らせていただく。

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