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1月14日付 編集手帳

 映画監督の小津安二郎は色紙を頼まれると、〈鯛夢出鳴門円也〉と好んで書いた。「(たい)の夢、鳴門を()でてまどかなり」という風流な一句かと思えば、違うらしい◆作家、戸板康二さんの『いろはかるた随筆』(丸ノ内出版)によると、「鯛夢出鳴門」は「タイム・イズ・ナット…」と英語読みするという。つづく「円」はお金のことで、全体の意味は〈タイム・イズ・ナット・マネー〉(時は金ならず=貴い時間は金銭に代えられぬ)となる◆足利事件の再審で無罪が確定した菅家利和さん(64)に対する刑事補償の記事を読み、その言葉をかみしめている◆約8000万円の刑事補償金が支払われるという。逮捕から釈放までの6395日について、1日あたり1万2500円の補償額になる。40代半ばからの17年半、人生を四季にたとえれば、男盛りの真夏から穏やかな実りの秋に移りゆく歳月の空白は、たとえ何億円をもってしても埋め合わせることはできない◆女児殺害の真犯人はどこにいる。失われた信頼をどう取り戻す。検察・警察が漫然と日を過ごすことは許されまい。こちらは〈時は金なり〉である。

2011年1月14日01時39分  読売新聞)
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