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レルヒ少佐の名を知る人は多くないだろうが、雪国の新潟ではなかなかの人気者だ。ゆるキャラの着ぐるみも登場した。日本人にスキーを教えた旧オーストリア・ハンガリー帝国の軍人で、その記念すべき初指導からきょうで100年になる▼雪中戦でのスキー活用を考えた陸軍の要請だった。今の上越市での「初滑り」は悲惨で滑稽だったらしい。頭から深雪に突っ込み、足だけ天に突き出してもがき――屈強ぞろいの陸軍兵もへとへとだったと伝わる。のちに国民的レジャーとなるスキーの、原点の日である▼上越市ではきょう、レルヒ像への献花や「日本スキー発祥の火」の採火がある。「レルヒさんカレー」もお目見えするなど地元は盛り上がっているそうだ。しかし、スキー人気はこのところ下降線をたどっている▼何より若い人が行かなくなった。車や外国への興味が薄れたのと同根だろうか。それとも寒さを嫌う「巣ごもり派」が増えているのか。スキー列車やスキーバスのにぎわいも、今は昔の話らしい▼レルヒ少佐の故国オーストリアも事情は似ているそうだ。五輪メダリストが数多(あまた)のスキー王国だが、昨今は「古い、寒い、退屈」と若者に敬遠されている。泉下の少佐は嘆いていようか。スキー関連は主力産業だけに懸念はひとしおらしい▼山へ、釣りへ。ガールは外に飛び出すが、ボーイが引きがちなのが気にかかる。〈滑降は縦横無尽…でもないが 遥(はる)かなり白馬の青春の空〉三枝コウ(コウは昂の左下が工)之。何十年ののち、いまどきのボーイは青春の空をどこに回想するだろう。