最近、米国や欧州で、鳥の大量死のケースが相次いで報告された。米国アーカンソー州で、この大(おお)晦日(みそか)に起きた事例についての、ナショナルジオグラフィック誌(電子版)の記事の表現はこうだ。<大量の鳥が雨のように空から落下し、辺り一面を黒く染め上げた>▼ただ、専門家は、花火などに驚いて飛び立った鳥が木などにぶつかったり、群れの中で鳥同士が衝突し合ったりした結果ではないかとみているようだ。特に怪異現象ではないとしても、その場にはいたくない不気味な光景である▼そう言えば、あれは、一体、どうなったんだろう。しばらく前になるが、日本でも各地でオタマジャクシが空から降った、と話題になったことがあった。原因が判明したという話は聞かないまま沙汰やみになっている▼古くは伊勢神宮などの神札が空から降ったという話も。その「神札降下」が幕末に起きたあの大騒動、「ええじゃないか」の契機になったともされる▼そして、もっと最近にはとんでもなく禍々(まがまが)しいものが空から降った。爆弾。そう、先の戦争中の空襲である。<落つるものなくなりし空が急に広し日本中の空を意識する>葛原妙子▼「成人の日」のきょうも日本海側などは、また雪になりそうだ。被害が出るような降り方は、無論、困る。けれど、空から降るのが雪や雨、という「当たり前」の安らかさも思う。