HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 36861 Content-Type: text/html ETag: "f49d6-12b8-5460f280" Expires: Mon, 10 Jan 2011 01:21:45 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Mon, 10 Jan 2011 01:21:45 GMT Connection: close 1月10日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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1月10日付 編集手帳

 その寄宿舎は鳥海山の麓にあった。豪雪で道が閉ざされて家から登校できなくなる小、中学生12人が、親元を離れ、そこで冬を過ごしていた。舎監と調理員が親代わりで、大家族のような(にぎ)やかさだった◆子供たちがたまに帰宅しても、父親は出稼ぎで留守だった。だから男たちが帰省する正月のつかの間、女や子供、年寄りの顔が輝いた。地区を挙げての雪上運動会も行われた◆集団就職の時代はとうの昔に終わっていたが、中学を出て都会に働きに出る者はまだ多かった。横浜で住み込みで新聞配達をしながら、夜間高校を卒業し、「大学に行く」という夢をかなえた頑張り屋もいた◆ニッポンが豊かになろうと走り続けた昭和が終わる頃。その過疎の村には、成長の恩恵は届いていなかったが、耐えることを知り、「家族が顔をそろえる」喜びを全身で感じて生きる人々がいた。人と人の絆も生きていた◆取材で訪れた雪国のそんな思い出が(よみがえ)ったのは、今冬の寒波のせいだろうか。今日は成人の日。不確かな時代に大人の仲間入りをする人たちに、確かに生きる手応えがあった時代の記憶を伝えたいと思う。

2011年1月10日01時27分  読売新聞)
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