HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 28859 Content-Type: text/html ETag: "5455c7-5e1e-e6783d40" Cache-Control: max-age=1 Expires: Mon, 10 Jan 2011 02:21:02 GMT Date: Mon, 10 Jan 2011 02:21:01 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):社説
現在位置:
  1. asahi.com
  2. 社説

社説

Astandなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

2011年1月10日(月)付

印刷

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

成人の日に―仲間とつながり世の中へ

「僕は二十歳(はたち)だった。それが人生でもっとも美しいときだなんて誰にも言わせない」成人の日を迎える君は、この一節を聞いたことがあるだろうか?フ[記事全文]

年金機構1年―徴収にも力を入れよ

年金の記録問題の解決は大切だが、国民の期待に応えるには、もうひとつの重要課題にもっと真剣に取り組んでもらわねばならない。廃止された社会保険庁の後継として業務を始めてから[記事全文]

成人の日に―仲間とつながり世の中へ

 「僕は二十歳(はたち)だった。それが人生でもっとも美しいときだなんて誰にも言わせない」

 成人の日を迎える君は、この一節を聞いたことがあるだろうか?

 フランスの作家ポール・ニザンの著書「アデン、アラビア」(小野正嗣訳)の書き出しである。

 青春は美しいと大人は言う。これに反発する若者たちの異議申し立てを、普遍的に表した一文だ。

 だがその大人の目にさえ、君を取り巻く状況は厳しく映る。とても「美しいとき」ではなかろう、と。

 1990年、東京証券取引所の新年は株価暴落で明けた。バブルの崩壊である。その後、株価も地価もなかなか元には戻らない。

 君は経済が右肩下がりの時代を生きた初めての世代のなかにいる。

 「失われた20年」の長期停滞から抜け出せない日本は、前例のない少子高齢化社会に突入している。

 君たちの肩には今後、国の抱える膨大な借金と、増え続ける年金や医療費の負担がのしかかる。そのうえ就職難だ。バイト代だって頭打ちが続く。

 アジアの他国が台頭するなか、君たちは、内向きだ、草食系だ、専業主婦願望が強いなどと評されてきた。中国や韓国の若者に比べ、ガッツがないと責められ、「龍馬、いでよ」「坂の上の雲はどこへ」とせっつかれる。

 こんな世の中にだれがした、と文句のひとつも言いたいところだろう。

 しかし電車でゲームや携帯に没頭する君たちを見ると大丈夫か、と心配が先に立つ。世間の情勢を知れば、暗くなるからと、現実から目をそむけているのではないかと疑いたくもなる。

 年配者の杞憂(きゆう)であれば幸いだ。

 君たちは携帯やデジタル機器とともに育った。雲は坂の上ではなく、インターネットのクラウドにあり、フェイスブックを通じて、世界中の人々と重層的につながってゆく可能性がある。

 大人たちはかつて、「人生の目標は自己実現だ」なんて力んでいた。でも君たちは何か違うものをもっている。「それは仲間」なのだろう。仲間とつながることはとても大切だ。

 新成人は124万人。初めて人口の1%を切った。数の上ではマイノリティーだ。だからなおさら、お互いにつながりを求めることは悪くない。

 でも仲間とだけではなく、いろんな人と話してみてはどうだろう。

 電子書籍を持って町に出る。知識を求め、自分たちの置かれている状況を知る。そのうえで仲間と連帯して世の中を変えていく志を持つことだ。

 高杉晋作の句を、厳しい時代にこぎ出す君へのエールとしたい。

「おもしろきこともなき世をおもしろく」

 こんな精神で世を渡って欲しい。

検索フォーム

年金機構1年―徴収にも力を入れよ

 年金の記録問題の解決は大切だが、国民の期待に応えるには、もうひとつの重要課題にもっと真剣に取り組んでもらわねばならない。

 廃止された社会保険庁の後継として業務を始めてから1年が過ぎた、日本年金機構のことである。

 機構は年金記録問題への対応に追われてきた。誰のものか分からない加入歴を年金加入者に結びつける作業が進んでいるが、手つかずに近いものは約980万件もある。今後、どのくらい時間と費用をかけて処理するか、いずれ政治の判断が求められよう。

 これと並ぶ大問題が年金の保険料の徴収不足である。2009年度に60%だった国民年金の徴収率は今年度、さらに低下しそうだ。厚生年金は未加入の企業数が増えている。

 記録問題への対応を優先し、本来は徴収にあたるべき人手を回した。そのために、戸別訪問や差し押さえといった手間のかかる対策がおろそかになったという。

 年金制度への信頼を回復するには、記録問題の解決が重要だ。しかし、保険料を集める努力が弱いままでは、制度が立ちゆかなくなる。

 ただし、単に「もっとしっかりやれ」と職員らの尻をたたいて徴収に力を注ぐだけではいけない。

 所得などの実態調査を徹底して徴収の実績を上げる一方で、収入が低くて保険料をなかなか払えない人については「未納・未加入」として排除せず、制度の中に包み込む柔軟な方法を、厚生労働省とともに工夫してほしい。

 たとえば、実態に即して保険料免除を認めることも必要だ。

 国民年金はすでに月額保険料が1万5千円を超え、低所得者の負担感は強い。機構は、市町村から所得情報をもらい、条件を満たす加入者に免除申請を勧めている。「本人が申し込む」という申請主義のルールが壁になっているなら、見直しの論議も望まれる。

 いずれは政府が導入しようとしている共通番号制を活用し、社会保障サービスを必要な人に届けたい。将来の消費増税などによる負担増を考えればなおさらのこと、きめ細かい徴収と給付の仕組みをつくってもらいたい。

 厚生年金も改革の余地がある。給与の約16%を労使が折半で負担する保険料率は、大企業にも新興の小企業にも適用されている。だが、雇用創出を強く促すには、創業期の負担軽減策を考えてもよいのではあるまいか。

 きめ細かい徴収制度を実現するには、実態の把握が欠かせない。

 かつては厚労省が現場無視で制度を設計し、旧社会保険庁が勝手に運用し、実態を隠していた。年金機構はその反省に立ち、現場の情報をさらけ出し、今後検討される「税と社会保障の一体改革」に協力する責務がある。

検索フォーム

PR情報