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天声人語

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2011年1月9日(日)付

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 川崎市の川柳作家古俣麻子(こまた・あさこ)さんの句をいくつか書きとめている。〈ポケットに無限をつめて少女羽化〉。人生の折々で、女性の思いをまっすぐに伝える技と感性が、琴線に触れた▼〈ひとことを飲み込めばすむ皿洗う〉は妻の忍耐だろう。〈この子抱く抱かれたかったように抱く〉には母性の握力を思う。そして〈機を織る鶴にもなれず飛べもせず〉である。主婦のかがみにも、キャリアウーマンにもなりきれない身、重ねた「ず」が切ない▼昨今は〈機を織る鶴〉の志望者が増えているらしい。夫は外で働き、妻は家を守るという分業を是とする既婚女性は、40代を底に、若くなるほど増える。調査によっては、20代以下で半数に近い。母親世代をしのぐ家回帰といえる▼40代の「均等法第一世代」が男社会の荒野に道をつけたのに、後輩たちにはなぜか、専業主婦への憧れが広がった。この時世、安定志向は当然ながら、男性との競争や就職難に背を向けたかにみえる▼むろん現実は厳しい。専業主婦の座を約束してくれる結婚相手はそうそう現れず、「ポケットの無限」はしぼんでいく。仕事も家庭もと頑張ってはみたが、聖子さんにも、百恵さんにもなりきれず、もんもんとする30代、40代は少なくない▼それでも、あす成人を祝う世代には、うらやましいほどの時間がある。20代は自分を試し、磨く時だ。家事労働は尊いが、皿洗いも子育ても、二人で繰り合わせる時代である。主婦にせよ主夫にせよ、「専業」は結果であって、目ざすものではない。まずは飛んでみよう。

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