HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 40323 Content-Type: text/html ETag: "104223-1ed0-4b617240" Expires: Sat, 08 Jan 2011 03:21:40 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sat, 08 Jan 2011 03:21:40 GMT Connection: close 世界経済混迷 通貨安競争の回避に具体策を : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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世界経済混迷 通貨安競争の回避に具体策を(1月7日付・読売社説)

 米国発の金融危機と戦後最悪の不況を克服した世界経済は、緩やかな景気回復が続いている。

 しかし、危機が再燃する兆しもあり、2011年の先行きは不透明だ。

 世界経済の失速を回避し、安定軌道に乗せるには、日米欧の先進国に中国など新興国を加えた主要20か国・地域(G20)の具体的な行動が、改めて必要になろう。

 昨年の世界経済は、G20による財政出動や金融緩和などの政策総動員の結果、低迷を脱した。その後、景気は本格回復に向かうと期待されたが見通しは外れた。

 ギリシャに端を発した欧州の財政危機問題が、春ごろから拡大して金融不安が広がり、欧米などの成長が急減速したからだ。

 金融安定化や景気下支えのため、日米欧の当局がそろって、一層の金融緩和に追い込まれたことが問題の深刻さを示した。

 こうした状況では、危機に対応して取られた異例の財政・金融政策を元に戻す「出口戦略」は時期尚早であろう。

 ◆米国にデフレ懸念◆

 国際通貨基金(IMF)の予想では、今年は世界全体で実質4%程度の成長が見込まれる。

 先進国は1〜2%台にとどまるが、約10%の成長を達成する中国、約8%のインドなど、新興国は好調だ。もたつく先進国と、高成長が続く新興国の二極化が鮮明になる。引き続き、新興国が世界経済の牽引(けんいん)役として期待されよう。

 だが、世界経済が抱えるリスクは大きい。最大の関心事は、米国が本格回復できるかどうかだ。

 米国の失業率は約10%に高止まりし、「雇用なき景気回復」の勢いは鈍い。雇用情勢の悪化に伴い個人消費は冷え込んできた。

 物価上昇率は1%弱となり、日本型のデフレに陥るのではないかという懸念もくすぶる。米国がデフレに陥れば、世界経済に大きな打撃となるのは確実だ。

 米連邦準備制度理事会(FRB)が昨秋、第2弾の量的緩和策(QE2)に踏み切った。米国債の購入などで巨額資金を市場に供給し、ゼロ金利政策も継続している。FRBがデフレ回避に全力を挙げる姿勢は評価できる。

 オバマ大統領も昨年末、大型減税の延長などの追加経済対策を決めた。政府とFRBが引き続き、連携を強めることが肝要だ。

 財政危機問題がアイルランドに波及した欧州も正念場である。

 欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)とIMFが連携し、ギリシャに続き、巨額資金を投じてアイルランドを救済したが、金融不安は消えていない。

 ◆欧州危機の連鎖を防げ◆

 今後、ポルトガルやスペインに危機が連鎖すれば、通貨ユーロの急落は避けられまい。欧州だけでなく、世界の市場も大揺れとなろう。そうした混乱を未然に防がねばならない。

 EUが、財政危機に陥ったユーロ導入国を支援するため、「欧州版IMF」を13年に設立することを決めたのは妥当である。

 欧州各国は財政再建を着実に進めながら、市場の信認を取り戻すことが急務だ。緊縮財政下で景気回復を目指す道は険しいが、放漫財政はもはや許されない。

 大国のドイツとフランスが、欧州経済の再生やユーロ防衛に果たす役割は大きく、責任は重い。

 米欧当局が景気下支えのため、輸出に有利に働くドル安とユーロ安を容認し、世界で通貨安競争が起きていることも懸念材料だ。

 中国当局は、通貨・人民元の対ドル相場の上昇を抑え、元安を堅持している。アジア各国やブラジルなども自国通貨安を維持しようと懸命だ。

 ◆警戒すべき中国バブル◆

 G20は昨秋、通貨安競争の回避で一致したが、具体策を先送りした。保護貿易主義の台頭を封じ込め、為替相場を安定させる具体策を早急に決める必要がある。

 こうした通貨摩擦に翻弄され、円相場はドルやユーロに対し高値で推移している。円高の定着は自動車など輸出産業の採算を悪化させ、景気回復にもマイナスだ。

 円高が一段と加速した場合には、日本の通貨当局は、再度の市場介入をためらうべきでない。

 米国の量的緩和策などで、中国などの新興国に過剰マネーが流入し、物価上昇や不動産バブルを招いていることも要警戒だ。

 中国当局は、金融引き締め策に動き出したが、景気過熱の抑制にさらに機動的に対応すべきである。それが中国だけでなく、世界経済の安定にも有益だろう。

2011年1月7日01時49分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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