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1月7日付 編集手帳

 X氏には悪い癖がある。一方的にしゃべり、相手の返答をロクに聞かずにまたしゃべる。職場の美しい女性との会話。「きのうの晩はお芝居にいらしたんですってね」「いいえ、疲れていたので、早くから寝床に入りましたわ」「お友だちとご一緒なんでしょう」◆フランスの小咄(こばなし)にある。〈話す〉という行為は不思議なもので、〈聞く〉という行為を織り交ぜて初めて意味をもつ。問答で成り立つ「記者会見」と「演説」の違いもそこにあるだろう◆今期限りで退任する広島市の秋葉忠利市長(68)は退任記者会見の開催要請には応じないという。その代わりに演説を動画投稿サイト「ユーチューブ」に投稿したので、それを見てほしい、と◆なるほど投稿の動画であれば、耳の痛い質問を受けずに済む。辛口の論評を加えて報じられることもない。言葉の力を信じて核廃絶を世界に訴えてきた人の去り際に、しかし、X氏流の「問答無用」はやはりさびしい◆ヒロシマ被爆が大本営発表によって「損害若干」と報じられた痛切な過去がある。上からの一方的な“問答なき言葉”の害を、市長はお分かりのはずである。

2011年1月7日01時49分  読売新聞)
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