HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 05 Jan 2011 22:09:57 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:温暖化と生物多様性 二つのCOPが響き合い:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

温暖化と生物多様性 二つのCOPが響き合い

2011年1月5日

 昨年は二つのCOPが予想外の成果を挙げました。南北和解の若芽。大切に育てなければなりません。今年は特に温暖化対策が最大のヤマ場を迎えます。

 「カンクン合意」採択の木づちが鳴ると、NGOやオブザーバーも立ち上がり、拍手の渦が湧きました。笑顔満面。興奮気味に誰かが言いました。「これは、カンクン・ミラクル(奇跡)だ」

 昨年末、メキシコのカンクンで開かれた気候変動枠組み条約第十六回締約国会議(COP16)への期待は低調でした。一昨年のコペンハーゲンCOP15で、南北の対立がむしろ激しくなったから。

◆気温上昇は2度以内

 二酸化炭素(CO2)に代表される温室効果ガスの濃度は、十八世紀の英国に始まる産業革命後、急速に高くなっています。欧州、米国、少し遅れて日本は、膨大な石油、石炭を煙にし、アフリカやアジアの植民地から吸い上げた鉱物や生物資源を加工して、先進国という地位を築き上げました。

 先進国とは工業国の別名です。その代償が地球温暖化。世界の平均気温はこの百年で約〇・七度上昇しています。だから、温暖化対策の国際ルールを定めた京都議定書は、まず先進国だけに温室効果ガスの削減義務を課しました。

 しかし近年、途上国の工業化が著しく進行し、国連の科学者たちは二一〇〇年までに、最大で六・四度上昇する恐れがあると、警告を発しています。中国は、今や世界最大の排出国。もはや先進国の努力だけでは、温暖化を食い止めて、人類を未知の危機から救うことはできません。

 京都議定書の約束はあと一年で期限切れ。ルールの空白を避けるには、遅くとも今年のCOP17までには中身を決めないと、各国の国内手続きが間に合いません。

 カンクンでは京都議定書の延長論が台頭し、日本がそれに強く反対、会議はまたも滞り、あきらめムードが漂い始めた最終日。事態は劇的に変化します。

 議長を務めるメキシコのエスピノサ外相が、急きょ作った議長私案を提示しました。先進国、途上国双方が世界の気温上昇を二度以内に抑えるよう、目標を掲げて努力する。先進国は基金を設けて途上国の目標達成を支援し、途上国は国際検証を受け入れる−。

 「すべての国に対して完璧ではないかもしれないが、すべての国の意見を一部は反映させた」。議長の演説は、総立ちの拍手に包まれました。カンクン合意への道は、拍手で開かれました。

◆歴史の壁乗り越えて

 既視感のある光景でした。十月に名古屋市で開かれた生物多様性条約第十回締約国会議(COP10)。先進国と途上国が、生き物から得られるさまざまな利益をどのように分け合うか。こちらの方のルールづくりも難題でした。問題の根っこはやはり歴史観。南には、植物や微生物を北が勝手に持ち出して医薬品などを開発し、利益を独占してきたことへの割り切れなさがあるからです。

 アフリカなどは、産業革命よりさらに三百年、マゼランやコロンブスが七つの海を巡った大航海時代にまでさかのぼり、利益の配分を強く求めていたほどです。

 しかしこちらも最終日、議長の松本龍環境相が示した私案を受け入れて、名古屋議定書が拍手の中で産声を上げました。

 中南米やアフリカが「内容には不同意だが、採択は邪魔しない」と主張したのが印象的でした。

 二つのCOPは、重要なメッセージを伝えています。

 誰も決裂は望んでいない。このままでいいとは思っていない。地球環境への危機感は共有されつつあるようだ。だからカンクンと名古屋の拍手が響き合い、潮目を変えた。歩み寄りが始まった−。

 どちらのCOPも、多様な可能性を残して妥協したとの評価も可能です。しかし、正解は出せないまでも、とにかく前へ進まなければなりません。地球環境への危機感と、北から南への資金の流れをばねにして、歴史の壁を本当に乗り越えられるか否かが、南アフリカのCOP17で試されます。

◆南の森が調和の舞台

 気候変動と生物多様性の問題は、ワンセットで取り組むべきだという声も、次第に大きくなっています。途上国の森林破壊や劣化を回避して温室効果ガスを減らす活動(REDD)は、名古屋のCOP10でも再三話題に上り、カンクン合意で正式に推進されることになりました。健全な森林はCO2を吸収してくれます。

 今年は国連国際森林年。森林の役割に対する理解を深め、持続可能な開発の在り方を考えます。二つのCOPをカチンと合わせ、南の豊かな森の木陰に、調和の音色を響かせなければなりません。

 

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