HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 18051 Content-Type: text/html ETag: "82bbf6-4683-7ff8fa00" Cache-Control: max-age=5 Expires: Wed, 05 Jan 2011 23:21:42 GMT Date: Wed, 05 Jan 2011 23:21:37 GMT Connection: close
Astandなら過去の朝日新聞天声人語が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)
数字を聞くだけで畏敬(いけい)をおぼえる木々がある。たとえば米国カリフォルニア州の森にある杉の一種ギガント・セコイアは高さが84メートルある。推定重量は実に1358トン。推定樹齢が2千年を超える立ち姿は、神々しいばかりだという▼名古屋大名誉教授の只木良也さんが森林文化協会の月刊誌「グリーン・パワー」で紹介していた。仲間には樹高111メートルの木もあるそうだ。長寿を全うすると、根が自重を支えきれなくなり、大地に倒れ伏して生涯を終える。太古から連綿と続いてきた、悠然たる森林の営みである▼地球を覆う森林に包まれて、人類はじめ多くの生物は育まれてきた。あまり知られていないようだが、今年は国連の定めた「国際森林年」である。世界各地で追いつめられる「緑」の実情を知り、守り育てる意思を確かめ合う1年にしたいものだ▼毎年、日本の国土の2割にあたる森林が地上から消えているというから驚く。生態系は失われ、温暖化を加速させる。遠目には美しく豊かな日本の森林も、放置されるなどして荒れた所が少なくない▼このあいだ近郊の山を歩いたら、間伐されない人工林は昼も暗く寒々としていた。だが農家の耕作放棄地に比べ、話題になることは少ない。新緑や紅葉は愛(め)でるが林業には縁遠い。それが平均的な関心度なのだろう▼日本の国土の約7割は森林が占める。屈指の森林国だが、国民1人あたりで割ると、とたんに「貧林国」になると、かつて只木さんが書いていた。貧なればこそ、共有財産としてのありがたみは計り知れない。