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今年の初取引となったニューヨーク株式市場は、終値が2年4カ月ぶりの高値となった。米国にも「卯年(うどし)は跳ねる」の相場格言があるのだろうか。きのう大発会だった東京株式市場の終値も、昨年末よりちょいと跳ねて、まずは良し▼今年の賀状には「跳ねる」「とぶ」を目標にする一言が目立った。精彩を欠いた寅(とら)年から、機敏で利発そうな兎(うさぎ)への心機一転は、干支(えと)の効用の一つだろう。「卯年の果報は寝て待つな」という風変わりもあった。これは中国の故事の「守株(しゅしゅ)」をもじったらしい▼ある日、男が畑を耕していると、兎が跳び出して切り株に頭をぶつけて死んだ。それから男は畑仕事を放り出し、連日切り株を見張って笑いものになった。童謡「待ちぼうけ」でも知られる話は、旧習にとらわれて、時に応じた進歩ができない愚の例えである▼とはいっても、時勢に棹(さお)さすだけでは流される。目先の変化や、皮相な流行にたじろがぬ「不易」を身の内に養いたいとも思う。時に遅れず、されど追わず。そう生きたいが、なかなか難しい▼晴れやらぬ時代を映してか、三が日の社寺はにぎわったらしい。〈日本がここに集る初詣〉山口誓子。昨今はパワースポットブームだという。去年のことだが、伊勢神宮の年間参拝者は860万人を超えて過去最高を記録した▼「山を動かす技術のあるところでは、山を動かす信仰はいらない」と米国の哲人が言っていた。人の世に様々な山がある。願掛けで動かすか、兎にあやかり跳ねて越えるか。政治の影の薄いのが、気にかかる。