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2011年1月5日(水)付

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首相年頭会見―本気ならば応援しよう

まずは「その意気や良し」としておこう。今度こそ、ぶれず、ひるまず、掲げた目標をやり遂げてほしい。菅直人首相が年頭の記者会見で、政権の今年の重点課題を明確にした。[記事全文]

ロシア―これが目指す法治国家か

やはりロシアは異質なのか。年明けの世界に懸念が広まっている。きっかけは昨年暮れ、服役中の元石油最大手企業社長、ホドルコフスキー被告に、裁判所が刑期を大幅に延ばす新たな判[記事全文]

首相年頭会見―本気ならば応援しよう

 まずは「その意気や良し」としておこう。今度こそ、ぶれず、ひるまず、掲げた目標をやり遂げてほしい。

 菅直人首相が年頭の記者会見で、政権の今年の重点課題を明確にした。

 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への参加を念頭に置いた「平成の開国」、消費税引き上げを含む税制と社会保障の一体改革、政治とカネの問題へのけじめ――の3点である。

 迷走してきた政権運営を立て直し、政党政治への国民の信頼を取り戻す。その足がかりとして、TPPと消費税に政策目標を絞り込んだ首相の問題意識を私たちは共有する。

 貿易立国の日本にとって自由貿易の強化は、勃興する新興国の需要を取り込むうえでも、死活的に重要だ。衰退の一途にある農業を再生させる好機にもつなげたい。

 一方、膨れあがる財政赤字を放置したまま、これ以上予算を組めないことは、昨年末の予算編成で明らかだ。国民の安心の基盤である社会保障を将来にわたって守るためには、もはや負担増から逃げ続けるわけにはいかない。

 とはいえ、いずれの課題も、足元の民主党内だけでなく、国民の間にも慎重論、反対論が少なくない。政権の体力を消耗する大仕事になろう。ねじれ国会乗り切りもおぼつかない首相に、どこまでの覚悟があるのか心配だ。

 首相は昨年の参院選で「消費税10%」を掲げたが、形勢不利とみるや発言を後退させた。TPPも党内の異論に押され、昨年11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)での交渉参加表明を見送った。腰の定まらなさを、これ以上見せられるのは御免である。

 来年からは団塊の世代が年金を受け取る側に回り始める。社会保障の財源確保は待ったなしだ。TPPは、関係国が今年11月の交渉妥結を目指している。日本の参加が遅れれば、主張を反映させる余地は小さくなるだろう。

 いずれも今年こそが正念場なのである。首相は不退転の決意で、党内の反対派や野党を説得し、国民にも丁寧な説明を尽くして、合意形成の先頭に立たなければいけない。

 社会保障と税制の一体改革について、首相は自民、公明など野党に超党派の議論への参加を呼びかけた。

 いずれの党が政権を担っても避けて通れない課題である。政権の真摯(しんし)な提案には、野党も真摯に応じるべきだ。政権を追い込むといった政略を優先するあまり、話し合い自体を拒むようなことがあってはならない。

 もちろん、その環境を整える責任が首相にはある。首相が二つの政策課題とともに、政治とカネの問題へのけじめを掲げたのは当然だ。その第一歩として、通常国会が始まる前に、小沢一郎氏の政治倫理審査会出席を実現する。それがすべての出発点である。

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ロシア―これが目指す法治国家か

 やはりロシアは異質なのか。年明けの世界に懸念が広まっている。

 きっかけは昨年暮れ、服役中の元石油最大手企業社長、ホドルコフスキー被告に、裁判所が刑期を大幅に延ばす新たな判決を下したことだ。

 同被告は2003年に、ソ連崩壊後の混乱に乗じて不正に財を成したとして脱税などで逮捕された。だが、下院選前にプーチン政権の野党に資金援助をした直後だったので、「政治的報復ではないか」との批判を浴びた。服役は今年10月に終わるはずだった。

 石油横領の罪などに問われた今回、刑期は2017年まで延ばされた。同被告は獄中から発言を続け、政権批判の象徴的存在だ。刑期延長は、今年暮れの下院選や来年の大統領選といった政治日程を見越したように見える。

 裁判では事件当時の首相らが「犯罪の成立は困難」と証言するなど、起訴の是非が内外から疑問視された。だが、判決の直前にプーチン首相が「泥棒は牢屋に入れておけ」と発言、判決も結果的にそのようになった。

 クリントン米国務長官が「政治的判断による恣意的(しいてき)な起訴」として「司法の独立」の尊重を求めるなど、国際社会から強い批判が相次いでいる。

 プーチン大統領時代の8年間にロシアは、主産業の石油や天然ガスの高値で高度成長を続けた。だが、野党やメディアの締めつけ、経済や司法への国家の過度の介入、横行する汚職や腐敗が、ロシアのそれ以上の発展を損なっているとの批判も根強く出ている。

 一方、プーチン氏を継いだメドベージェフ大統領は「経済の現代化」とともに「独立した司法」や「法治国家」をロシアに植えつけ、健全な民主主義社会を建設することを主要課題としてきた。裁判は、それが言葉にとどまり、国際的な規範と異質なプーチン氏の政治手法が、なおこの国を支配していることを示した形だ。

 実際、メドベージェフ氏が掲げた課題に成果はほとんど見られない。そのことが投資環境の悪化も招き、昨年は300億ドルもの資本が国外流出するなど、経済への打撃も深刻である。

 異質論は、対外関係でも強まっている。昨年、米国と新たな戦略兵器の削減条約で合意した。しかし、米国がミサイル防衛を進めれば「新たな軍拡競争も辞さない」方針を崩さず、今後の核軍縮の行方を不透明にしている。

 日本との北方領土問題でもメドベージェフ大統領は四島を「我々の土地」とし、国後島訪問を正当化した。両国が批准した国際協定である日ソ共同宣言の歯舞・色丹2島の引き渡し規定は意に介さない態度で、その「法治主義」が疑問視されている。

 ロシアがこんな政策を続ける限り、世界と本音で協調するのは難しい。本気で改革を進めるべきだ。

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