HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 39780 Content-Type: text/html ETag: "ffb03-1e73-5822e780" Expires: Mon, 03 Jan 2011 20:21:37 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Mon, 03 Jan 2011 20:21:37 GMT Connection: close 日本経済再生 閉塞感の打破へ政策を転換せよ : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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日本経済再生 閉塞感の打破へ政策を転換せよ(1月4日付・読売社説)

 日本経済は景気回復の歩みが鈍り、「踊り場」でもたついている。

 デフレが続く中で、働く世代の人口減少が始まり、生産や消費への悪影響が懸念される。

 米国に次ぐ経済大国だった日本は、このまま衰退の道をたどるのか。社会保障や財政が破綻して、老後の暮らしが立ちゆかなくなるのではないか。そんな不安を抱く人も少なくないはずだ。

 強まる閉塞感を打破するため、今こそ経済政策の抜本的な見直しが必要である。

 世界同時不況を切り抜け、日本の景気は2009年春から好転した。だが、大規模な景気対策やアジアの成長による外需拡大などが一時的な追い風になっただけで、自律的な成長力の頼りなさは、昨秋からの景気の足踏みを見れば明らかである。

 9月のエコカー補助金打ち切りで自動車の販売は急減し、12月の家電エコポイント縮小を機に、薄型テレビなどの売れ行きにもブレーキがかかった。円高に加え海外経済の減速の影響で、頼みの輸出も伸びが鈍っている。

 ◆政策も外需も息切れ◆

 雇用も厳しい。失業率は5%台に高止まりしたままで、「就職氷河期」の寒風に吹かれた大勢の若者が“就活”で苦戦している。

 それでも、政府や日銀は、アジアなど海外経済が順調に盛り返し、輸出増加をテコに景気が回復していくと見込んでいる。

 そんな海外頼みの回復シナリオを描かれても、とても安心はできない。一昨年の政権交代からの度重なる政策ミスが、日本経済の復調を妨げかねないためだ。

 最近の失政のひとつは、環太平洋経済連携協定(TPP)への正式参加を見送ったことである。

 TPPは、アジア・太平洋の各国が互いに関税を撤廃し、貿易や投資を自由化するもので、アメリカやオーストラリア、シンガポールなど9か国が交渉している。

 日本は個別の自由貿易協定(FTA)で出遅れ、さらにTPPも不参加となれば、自由な貿易や投資の枠組みから締め出される。

 通商国家の日本にとって致命的な痛手となるのに、菅首相はあっさり決断を先送りした。

 ◆バラマキ農政を改めよ◆

 関税廃止で安い農産品が大量に輸入され、農業が壊滅する……。農水省や農業関係議員の、こうした主張に耳を貸したためだ。

 高関税に守られた農産品の生産額は、主食のコメさえ2兆円に届かない。関税が1700%のコンニャクイモは140億円、360%のバターも780億円だ。

 主要農産品の自給は重要だが、経済全体から見て規模の小さい農産品の保護にこだわり、「平成の開国」を果たせぬようでは、日本は国際競争から脱落する。

 ◆成長戦略の着実な実施を◆

 日本は昨年、中国に国内総生産(GDP)で抜かれたとみられる。経済の先細りを食い止める手立てはないのだろうか。

 実はこれまで、政府や民間で数多くの処方箋が示されている。

 政府の新成長戦略は、環境や医療・介護などの分野で、今後10年に120兆円を超える新たな需要を生み出す構想だ。

 労働人口の減少による消費や生産の低迷を防ぐため、女性の就労を促す子育て支援や、医療・介護サービスを充実させて需要を喚起する規制緩和など、メニューは盛りだくさんだ。

 ところが、いざ実施しようとすると、政府内で足並みが乱れて、なかなか前に進まなくなる政策も多い。成長政策で政治のリーダーシップが欠如していると言わざるを得ない。

 国民が将来に不安を感じる原因は、経済力の弱体化ばかりではない。社会保障制度のほころびと財政の悪化が、もはや危機的になっていることが大きい。

 国の社会保障費は毎年1兆円のペースで増え続けている。年金の国庫負担を、何とか工面した埋蔵金で穴埋めするような無理なやりくりは長続きしない。

 安定した財源を確保するため、近い将来、消費税の増税が避けられないことは明らかだ。

 菅首相は、事態の深刻さを率直に国民に説明し、税財政の抜本改革に取りかからねばならない。

 当然ながら、子ども手当や高速道路無料化など、国民に不評なバラマキ政策を続けたままでは、増税への理解を得られまい。

 まずは、政権公約(マニフェスト)を早急に撤回し、日本経済の成長を促す地に足のついた政策を提示すべきだ。

2011年1月4日01時06分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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