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1月4日付 編集手帳

 立原道造は正月の日記に書いた。〈啄木が世の中に出た年だからなあ…〉(筑摩書房『立原道造全集3』)。詩人としては無名の数え年17歳、1930年(昭和5年)1月3日付の記述にある◆すでに故人の石川啄木が同じ年齢で文芸誌『明星』を飾ったことを発奮の材料に、「お前もしっかりな」と自身を叱咤(しった)している。新しい年を迎えるとき、人は自分の年齢を意識する。元日に年齢を一つ重ねる数え年が主流の昔はなおさらだったろう◆自分と同年齢のとき、あの人はすでに…。新しい日記帳に向かうと、道造青年のようについ、会社の先輩であったり、上司であったり、速足の誰かと引き比べ、鈍足のわが身に愚痴の一つも出る、という人もいるに違いない◆きょうが仕事始めという方も多かろう。美しい足跡を残すのが韋駄天(いだてん)と限ったものではなし、あまり年齢で肩に力を入れず、そろり発進と参りましょうか◆言語学者で『広辞苑』の編者でもある(しん)村出(むらいずる)博士に、肩の力を抜くおまじないのような歌がある。〈小器われ晩成もせず永らへて凡器を抱き安らかに生く〉。心の安らぎ以上に美しい足跡はない。

2011年1月4日01時08分  読売新聞)
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