HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 36412 Content-Type: text/html ETag: "f5947-1274-a4d90b00" Expires: Sat, 01 Jan 2011 02:21:48 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sat, 01 Jan 2011 02:21:48 GMT Connection: close 1月1日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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1月1日付 編集手帳

 買い物に出た年の瀬の駅で、乗るつもりの電車が遅れた。飛び込み自殺だろうか、ホームのデジタル掲示板に「××駅で起きた人身事故のため…」と、遅れを()びる案内が流れた◆そうめずらしくもない出来事である。光の文字が流れる数秒を唯一の接点に、わが人生とかかわった人の名前は知らない。壁に掛けた真新しいカレンダーを眺めて、考えるときがある。ほんとうは未来のどこかで出会うはずの人ではなかったか、と◆〈新年は、死んだ人をしのぶためにある〉。詩人の中桐雅夫は書いた。〈心の優しいものが先に死ぬのはなぜか/おのれだけが生き残っているのはなぜかと問うためだ/でなければ、どうして朝から酒を飲んでいられる?〉(『きのうはあすに』)◆小学6年生の少女が孤独に耐えかねて自殺した事件を昨年、何度か取り上げた。中学や高校の友だち、恋人、伴侶、生まれてくる子供…多くの人々が未来で彼女を待っていたに違いない◆年の初め、新聞の片隅にあるこの小さな欄で、誰に何を語ろう。いまはまだ名前も知らない人よ、待ちぼうけはさせないで――と、ほかに浮かばない。

2011年1月1日00時41分  読売新聞)
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