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12月30日付 編集手帳

 電信柱の電線は眺めて美しい景観ではないが、この季節はそう目くじらを立てない。風が弦を弾くように鳴らす木枯らしの音を耳にすると、子供の昔にかえったようで、足をとめて聴き入ることがある◆『赤い靴』や『七つの子』で知られる作曲家、本居長世(もとおりながよ)は語ったという。「道を歩いていると、電線が五線紙に見える」と。冬に限れば、音楽の門外漢である身にもその気持ちは分かる◆年末年始、テレビには歌番組が多い。〈こりゃ誰だこの歌なんだ大みそか〉(サラリーマン川柳)とボヤくのも、正月休みならではだろう◆ある忘年会の席で思い出の曲が話題になった。中学生のころに聴いたうろ覚えの歌を挙げたところ、いまは廃盤らしいその曲を収めたテープを友人が届けてくれた。北原早苗さんの歌う『少年』(詞・万里村ゆき子、曲・加藤和彦、1970年)という。?ともだちの生きかた おんなのひとのにおい だれかのうわさや ふしぎな胸さわぎ…思春期の扉に立つ少年の、心の波立ちが静かに歌われている◆胸のなかにも電線があるのか、懐かしい風に思い出のあれこれが鳴りやまずにいる。

2010年12月30日01時22分  読売新聞)
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