HTTP/1.1 200 OK Date: Thu, 30 Dec 2010 00:12:25 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:一年が終わるんだなと、しみじみと感じるのは、大掃除が終わり…:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 筆洗 > 記事

ここから本文

【コラム】

筆洗

2010年12月30日

 一年が終わるんだなと、しみじみと感じるのは、大掃除が終わり、カレンダーを掛け替える瞬間かもしれない。最後に残った一枚を取り外すとき、完走したマラソンランナーの気分に浸ると言ったら、大げさだろうか▼全国の書店員が、最も売りたい本を投票で選ぶ今年の「本屋大賞」は、冲方丁(うぶかたとう)さんの『天地明察』だった。江戸時代に日本独自の暦をつくる大事業(貞享改暦)を成し遂げた渋川春海(一六三九〜一七一五)の生涯を爽やかに描いた時代小説である▼冲方さんは岐阜県生まれ。高校生のときに春海の存在を知り、偉大な功績を広く伝えたいと願ってきたが、教室で発表したリポートにはまったく級友たちの関心が集まらなかった。その屈辱が作品の原点にあるそうだ▼冲方さんは春海にこんな独白をさせている。<それにしても暦というものも実に不思議なしろものだ。日本全国、ほぼ同じものが出回っているにもかかわらず、自分が手にした瞬間、それは自分だけの時を刻み始めるのである>▼時代は違うが確かにそうだなと思う。新年のカレンダーを壁にとめたときから、自分の、そして家族の新しい時間が、歯車をきしませながら動きだすような気がする▼<一日もおろそかならず古暦>(高浜虚子)。良いことも、悪いこともあったこの一年。泣いても笑っても残すところはきょうと明日の二日だけ。

 

この記事を印刷する





おすすめサイト

ads by adingo