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12月29日付 編集手帳

 当代勘三郎さんの父上、十七代中村勘三郎さんは「中村もしほ」を名乗っていた若い頃、()を患った。同じ医者に通っていた作家の村上元三さんが『思い出の時代作家たち』(文芸春秋刊)に挿話を書き留めている◆もしほを診察するのが嫌だ、と医者が言う。村上さんが理由をたずねると、「俺の尻を見せてやる、という顔をするんで…」。名優には診察室の医者も観客になるのか、ちょっと楽しい◆政治家が真似(まね)てもサマにならない。衆院政治倫理審査会に出席する意向を表明した小沢一郎氏には幾分、そのきらいがある◆予算審議のためだとか、挙党一致のためだとか、言葉の端ばしに(にじ)む「出席してやる」「俺の説明を聴かせてやる」姿勢はおかしい。進んで説明の場を求め、質疑という“診察”を受けて疑惑を晴らすのが本当だろう。世間の視線が分かっていない◆痔といえば、夏目漱石の小説『明暗』はその治療の場面から始まる。医者は主人公に告げた。「治療法を変へて根本的の手術を一思(ひとおも)ひに()るより(ほか)に仕方がありませんね」。そのセリフを、いつか有権者がつぶやく日が来ないとも限らない。

2010年12月29日01時19分  読売新聞)
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