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12月28日付 編集手帳

 ベテラン刑事の佐藤(志村喬)が四半世紀の刑事人生を顧みて、後輩の村上(三船敏郎)に言う。「さて、どのくらい靴を履きつぶしたか…」。黒沢明監督の映画『野良犬』のひとこまである◆靴を履きつぶす――コツコツ歩いて回る丹念な捜査を言い表して、これにまさる表現はあるまい。この事件に携わる捜査員は誰もが、おそらくは何足も靴を履きつぶしてきたことだろう◆東京都世田谷区の会社員、宮沢みきおさん(当時44歳)方で宮沢さんと妻、子供2人が惨殺されて、まもなく10年になる。現場からは凶器の包丁など多くの遺留品が見つかり、指紋も検出されたが、犯人はまだ捕まっていない◆長女にいなちゃん(同8歳)、長男礼君(同6歳)はほんとうならば18歳と16歳、毎日が楽しくてならない青春の真っ盛りである。靴を履きつぶしてきただろう捜査員の努力が、一日も早く実ることを祈るほかはない◆今年3月に死去した歌人の竹山広さんは詠んでいる。〈一家四人殺害の大見出しのある新聞がきて新世紀あく〉。記憶の限りでは最もむごい元日紙面に見入り、背筋を凍らせた朝を思い出す。

2010年12月28日01時18分  読売新聞)
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