環境税の創設が固まった。化石燃料に課税し省エネ対策などに使うとの触れ込みだが、CO2削減には既に巨額の税金が投じられている。新税導入の前に、無駄を削る事業仕分けを優先すべきだ。
まずは導入ありき。昨年、地球温暖化対策税(環境税)の導入を先送りした政府税制調査会の論議は、そんな印象をぬぐえない。
政府はその際、ガソリンなどの暫定税率廃止を前提とした財源転用で税収二兆円を掲げたが、来秋を目指す今回の仕切り直しでは暫定税率の維持で二千四百億円に大幅減額した。
経済界などから反発を招いた昨年の二の舞いを避けようと、国民負担を「薄く広く」にあっさり転じたことが理由だが、ならば二兆円は過大な見積もりだったのか。国民が納得する説明を求めたい。使い道も具体的に示さず、不誠実な制度設計と言わざるを得ない。
環境税は二酸化炭素(CO2)を排出する全化石燃料に課税して消費量を抑え、二〇三〇年の排出量を一九九〇年比で30%減らすことが目的だ。石油石炭税を一・五倍に引き上げ、二千四百億円の増税分を環境税に置き換える。標準世帯は電気やガソリン代などの値上げで年千百五十四円の負担増だ。
それだけに、日本が温室効果ガスの削減を約束した京都議定書に沿って温暖化対策を進め、既に国と地方合わせた関連予算が年三兆円に達した事実を見過ごせない。
百をゆうに超す対策は経済産業、農林水産、環境省などにまたがり、太陽電池やエコカー開発などで重複する事業も少なくない。
中には治山や地方バス路線への補助金など、おおよそ温暖化防止とは程遠い事業も目につく。
省益拡大を狙った予算分捕りの復活でもあり放置できない。温暖化対策はもちろん避けて通れぬが、既存の対策の費用対効果を評価し、CO2が削減されているか否かの判定を何より優先すべきだ。
三兆円を有効に使えば、日本のCO2排出量を八割減らせるという民間研究機関の指摘もある。
経産省は税調に事業重複を検証する会議の設置を提案、目的が不明確な政策の排除を求めた。政治家も官僚も温暖化対策に名を借りた安易な予算要求を知りつくしていると見るべきだ。
無駄削減で予算を効率化する−は民主党の公約だ。温暖化対策を仕分けして総合調整する機能こそが求められている。総じて所得が減り続けている国民に、無駄な税負担を引き受ける余裕はない。
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