冬休みに入って、おじいちゃん、おばあちゃんの家に泊まりがけで遊びに行っている子どもも多いと思う。<孫のかわいいと向こう脛(ずね)の痛いのはこらえられぬ>の諺(ことわざ)通り、祖父母にとって孫は自分の子よりもかわいいらしい▼目の中に入れても痛くない者が、目の前で事故に遭い命を失ったら…。その悲嘆の深さは想像もできない。先の短い自分が代わってやりたいと、心底思う人も少なくないだろう▼東京都大田区の中原街道で痛ましい事故が起きた。栃木県から祖父母の家に来ていた小学校三年生水島光偉(みつより)君が、歩道に突っ込んできた乗用車にはねられ亡くなった。六歳のいとこも意識不明の重体になり、祖父母も大けがを負った▼きのうの午後、事故現場に立った。猛スピードで突っ込んだのだろう。厚さ二十センチはあるコンクリートの壁は衝撃でグシャっと割れ、黒いタイヤ痕が生々しかった▼片道二車線の道路と歩道。どこにでもある光景だ。駆け出す犬の手綱を握った孫が先を歩き、笑顔の祖父母が続く。そんな平凡な日常は暗転した▼現行犯逮捕された二十歳の男は、無理な追い越しでハンドル操作を誤ったという。若い彼が背負ったのは、生涯をかけても償い切れないような重い責任だ。師走に入り、交通死亡事故が急増している。ハンドルを握るのは凶器を持つのと同じだと、いまさらながら実感させられる。