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Astandなら過去の朝日新聞天声人語が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)
たとえば漱石を読むと、東京の冬は当時かなり寒かったことがうかがえる。身辺を描いた小品によれば、ある朝、風呂場は氷でかちかち光っている。水道も凍りつき、温水をかけてやっと使えている。いまは屋外も凍ることはまれだ▼小説「二百十日」にも寒い朝のくだりがある。〈布団のなかで世の中の寒さを一二(いちに)寸の厚さに遮(さえ)ぎって……〉は言い得て妙だ。そして夜具の中で海老(えび)のように丸くなる。寒い朝の布団の内と外に、極楽と地獄の隔たりを思う人は、今も少なくないだろう▼その極楽から、地獄ならぬ現実へ。冬の朝、目覚めてから布団を抜け出るまでの平均は13分余りという数字を、気象情報会社「ウェザーニューズ」が算出した。全国1万1千人のアンケート回答をもとに集計したそうだ▼寝起きの抵抗といえば「あと5分」が定番だが、実際はだいぶ長いようだ。とはいえ、最後にはいやが応でも起きなくてはならない。時間を切られたシンデレラだからこそ布団は至福のぬくもりとなる。この値千金(あたいせんきん)感、くやしいが休みの朝では味わえない▼おそらく漱石の時代と変わらないのは、布団を出るのに一番必要なのは「気合」という点だろう。最多の56%が答えたそうだ。2位は「部屋を暖める」の33%。こちらは火鉢の昔よりずいぶん楽になった▼今年も大詰めの日々となり、寒波の到来で北国は大雪が続く。夏の猛暑と相殺してほしいが天の采配はままならない。〈冬は又(また)夏がましじやと言ひにけり〉は江戸期の鬼貫。寒さ対策と雪への備えを、どうぞ怠りなく。