政府は、子育て支援策の柱に幼稚園と認可保育所の一体化を検討している。喫緊の課題である待機児童対策を優先させながら、ニーズに応える制度にするための慎重さも必要だ。
政府は、各省庁の子育て支援策と予算を一本化する総合政策制度「子ども・子育て新システム」を検討している。狙いは、すべての子供たちに必要な教育と保育サービスを保証すること。その柱政策のひとつが幼保一体化だ。
認可保育所は、パートで働く人が希望する短時間保育や、夜間・休日保育など多様化するニーズになかなか対応できない。教育を提供する幼稚園は、就学時間が一日四時間ほどで、子供を一日預けたい共働き家庭には利用しにくい。
一体化は「こども園」という新施設として就学前の子供たちに教育と保育を一体的に提供する重要な「人生前半の社会保障」だ。
ただ、こども園への完全移行に十年を想定している。保育ニーズの高い三歳未満児の受け入れは義務付けていない。一体化は必ずしも待機児童対策ではない。
一体化は、二〇〇九年の衆院選マニフェストで子育て支援策の一本化を掲げた民主党政権が打ち出した。来年一月には関連法案をまとめ、三月に通常国会に提出して成立を図り、一三年度から施行するという。
だが、具体的な一体化の形を新システムの作業チームが検討し始めたのは九月からだ。目的も理念も違う、教育機関の幼稚園と福祉施設の保育所をどう一体化させるのか。利用者が自由に入園先を選べ確実に入園できる保証や、幼稚園ごとに独自性を出してきた教育の多様性をどう確保するのか、保育の質の確保や利用料設定など検討課題は多い。
これまでも一体化の議論はあったが、その難しさから幼稚園や保育所の関係者は反発してきた。
もともと多様な保育ニーズに応える保育制度改革が、厚生労働省で検討されてきた。一三年度施行はこの改革が目指していたものだ。一体化は、民主党政権が公約達成のために、この改革に加えられた拙速感が否めない。移行期間の十年についても作業チームで疑問の声が出ている。
今、子育て世帯は多様な働き方に対応でき、すぐ入れる施設を求めている。できる待機児童対策を早急に図りながら、一体化の検討は利用者ニーズに応えられる制度を目指し、着実に進めるべきだ。
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