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2010年12月24日(金)付

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新核軍縮条約―多国間の削減へ踏み出せ

米ロの戦略核兵器を減らす新核軍縮条約が、発効へと大きく前進した。批准承認を渋っていた米議会上院が、条約調印から8カ月たってようやく可決にたどりついた。発効のめどがたたな[記事全文]

海保ビデオ―ネット時代に残した課題

尖閣沖での衝突映像が動画サイトに流出して1カ月半。映像を投稿した海上保安官について、海上保安庁は1年間の停職処分とした。処分は海保職員・幹部計24人に及び、鈴木久泰長官は減給となった。[記事全文]

新核軍縮条約―多国間の削減へ踏み出せ

 米ロの戦略核兵器を減らす新核軍縮条約が、発効へと大きく前進した。批准承認を渋っていた米議会上院が、条約調印から8カ月たってようやく可決にたどりついた。

 発効のめどがたたないままだと、オバマ大統領が打ち出した「核のない世界」への構想が根本から揺らぎかねなかった。土俵際で踏みとどまって、核ゼロに向かう構想を崩壊させなかったことの意義は大きい。

 これを弾みにして、昨年4月の「プラハ演説」で示した包括的核実験禁止条約(CTBT)の米国での批准、兵器用核分裂性物質の生産禁止に関する条約交渉の開始、核保有国によるさらなる軍縮などを、一刻も早く前進させるべきである。

 とくに、今後の核軍縮について注文をつけておきたい。

 米ロは、新条約の発効から7年以内に、戦略核弾頭を双方1550発以下まで減らす。だがこの数でさえ、過剰な殺戮(さつりく)能力が残ることに変わりない。

 文明破壊の危険から脱するために、この期限を待たずに1千発以下に減らす条約交渉を急ぐべきだ。できれば、2015年にある次回の核不拡散条約(NPT)再検討会議までに、次の核軍縮条約を発効させたい。

 米ロ以外の核保有国との協議をさぐることも大事だ。

 中国は「米ロ核軍縮が先だ」との立場をとり続けてきた。だが、米ロ双方の1千発以下の時代が見えてくれば、もはや中国も核軍備管理から逃げられない。むしろ積極的に多国間の協議について提案すべきだろう。

 とくにアジアでは、核軍縮が通常戦力の軍拡を引き起こすことがないように、地域的な軍備管理、安全保障の枠組みのあり方を米中や関係国で協議していく必要がある。

 それを呼びかけ、新たな構想を示すのは、被爆国である日本の重要な役割だろう。それが日本の安全保障に資することも忘れてはならない。

 今回の新条約の発効には、ロシアの批准が欠かせない。条約がなければ、急速に老朽化が進む核ミサイルの更新費用が大きな財政負担になる。ロシアにも理にかなう条約だ。早期に批准すべきである。

 新条約には米国の共和党政権期の元国務長官、元国防長官たちが相次いで支持を表明してきた。それなのに承認が先延ばしされたのは、共和党内にオバマ大統領の得点になることに協力したくない空気が強いからだ。

 核軍縮を進めぬ限り、核不拡散を主張する米国の足場は弱まる。それは、米国や同盟国の安全保障問題に直結する。党派的な利害で足を引っ張る共和党の姿勢は、NPTの下で「核のない世界」に向かう多くの国の意思を軽視するものだ。強く反省を促したい。

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海保ビデオ―ネット時代に残した課題

 尖閣沖での衝突映像が動画サイトに流出して1カ月半。映像を投稿した海上保安官について、海上保安庁は1年間の停職処分とした。処分は海保職員・幹部計24人に及び、鈴木久泰長官は減給となった。

 保安官の行動は公務員として容認できるものではない。停職1年の処分は重すぎることはなかろう。本人は自ら職を辞することになった。

 衝突事件後、政府が映像の非公開を決めたのは、その時点での外交関係を踏まえた判断だった。それを末端の職員が自分勝手な思いから流出させた。海上保安官が警察権限を持ち、武器を扱う職業だという重みも忘れてはならない。

 政府が非公開にしたことには賛否両論ある。だが、ユーチューブへの投稿が、国民の知る権利に応える適切な方法だっただろうか。あの映像も全体の中の一部に過ぎない。たまたま入手できた保安官が、無責任な形でネットに載せた。

 一方で、海保という組織全体の情報管理の緩さ、認識の甘さも浮かび上がっている。

 映像はもとは、沖縄の管区海上保安本部から広島の海上保安大学校に送信されたものだ。双方が相手方が削除すると思いこんだまま、海保職員なら誰でも閲覧できるパブリックフォルダーに5日間放置された。全国で36人の職員が映像を目にしていた。流出の発覚後も、職員らは自身がやりとりした映像が漏れ出た可能性に思い至らず、上司に報告をしなかった。

 鈴木長官は職にとどまり、再発防止策に取り組むという。であるならば、情報保全態勢の強化と職員の意識改革に、全力で当たらねばならない。それが、海保の仕事ぶりへの尊敬と信頼を高める道にもなる。

 処分と同じ日、警視庁は国家公務員法の守秘義務違反容疑で、この保安官を東京地検に書類送検した。だが刑事責任まで問うべきかどうかは、難しい判断になっている。映像の管理の甘さが、結果としてその「秘密性」を薄めたためだ。地検は不起訴とする方向のようだ。

 今回の映像流出は、デジタル化とインターネットの発達で、情報の持ち運びや一個人による情報発信が飛躍的に容易になる中で起きた。人々の情報に対する欲求も変わりつつある。

 政府が持つ情報は、主権者にできるだけ提供して判断を仰ぐのが原則だ。そのもとに、外交などの機微を伴う情報をどう保全し、公開するか。説明する責任はネット時代にますます重い。市民はあふれる情報をどう受け止めるか。間をつなぐメディアは、どう責任をもって、知る権利に応えるべきか。

 尖閣沖からの映像は、多くの宿題を残した。

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