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イラク新政権 挙国一致を実のあるものに(12月23日付・読売社説)

 今年3月の国民議会選挙から9か月半の迷走の末に、イラクでようやく新政権が発足した。

 組閣がここまで長引いたのは、選挙で、マリキ首相率いるイスラム教シーア派政党とスンニ派主体の政治勢力が、2議席の差で拮抗(きっこう)したためだ。

 激しい駆け引きの末、シーア派、スンニ派、クルド人の3大勢力がマリキ氏を首相とする連立に合意した。挙国一致内閣の成立をひとまず歓迎したい。

 フセイン政権崩壊後のイラクでは旧政権時代の支配層だったスンニ派が主役の座から追われ、シーア派とクルド人が政権運営を主導してきた。それがスンニ派の反発を生み、2006年から07年の激しい宗派抗争の一因となった。

 新政権はそうした抗争を再燃させてはならない。

 副首相の1人には、選挙の際に旧政権与党バース党とのつながりを指摘され、立候補資格を剥奪されたスンニ派の有力者が就いた。これを機に、これまで公職から排除されてきたバース党関係者の復帰が進めば、国民和解に寄与することにもなろう。

 しかし、新政権の前途には、難題も山積している。

 各派の利害調整がつかず、国防相や内相など治安を担う重要閣僚を決められないまま、政権発足は“見切り発車”になった。当面は首相らが兼務するが、後日の人選を政争の種にしてはなるまい。

 北部の産油都市キルクークの帰属をめぐるクルド人とアラブ人の争いも、緒についた国民融和の歩みを逆行させる危険性がある。新政権が対応を誤れば、流血の民族抗争を招きかねない。

 イラク復興のカギを握る油田開発のルールを定める石油法が未整備なのも、気がかりだ。石油利権をめぐって、各民族・各宗派間の争いが先鋭化する恐れがある。

 イラク自立の成否は、ひとえにイラク人の肩にかかっている。宗派、民族ごとの帰属意識を抑え、イラク国民としての一体感をどう醸成するか。新政権がまず、その範を示さなければならない。

 イラクでは来年末、残る約5万の駐留米軍が撤収する。新政権は、イラクの完全な自立に大きな責任を負うことになる。

 イラクが再び混迷に陥れば、中東はもちろん、世界全体に大きな影響が及ぶ。

 新政権の最優先課題は、イラクを安定させることだ。日本や米国など国際社会も、そうした新政権の努力を、できるだけ支援していく必要がある。

2010年12月23日02時02分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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