HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 22 Dec 2010 22:10:10 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:脱線事故裁判 解明なくして安全なし:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

脱線事故裁判 解明なくして安全なし

2010年12月22日

 尼崎JR脱線事故の初公判で、検察と被告の主張は真っ向から対立した。わが国鉄道の歴史で希有(けう)の大事故が繰り返されないよう、原因と真実を白日の下にさらすことを求める。

 二〇〇五年四月、兵庫県尼崎市のJR福知山線で起きた快速電車の脱線事故は、乗客百六人死亡、五百六十二人負傷の大惨事だ。安全対策を怠ったと業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本の前社長の初公判で、検察側が全死傷者の氏名を朗読したのは、事故の重大さを象徴したといえよう。

 また先進的な技術を使っているはずの日本の鉄道で、このような重大事故がなぜ起きたか。国民全体が当然抱く疑問である。

 交通機関の重大事故で、現場責任者ではない経営幹部の刑事責任を問うのは異例だが、被告の責任を明らかにしたうえ、事故の原因と背景を法廷の場でも究明、再発防止につなげる必要がある。

 他社の事故の前例から急カーブの現場の危険を認識していたか、認識しつつ自動列車停止装置(ATS)の設置を怠り、事故を招いたかどうか、などが法廷での争点となった。

 事故電車の運転士は事故現場手前の駅でオーバーランするなど遅れを出し、それを取り戻すため制限速度を大幅に超え、現場の急カーブに進入、事故に至った。

 国土交通省航空・鉄道事故調査委員会はすでに〇七年六月、最終報告を国交相に提出している。その中で、運転士がミスによる懲罰的な「日勤教育」を恐れ、ブレーキ操作を誤った、ATSがあれば事故は防げたと指摘している。

 JR西日本は収益第一、安全軽視の体質が目立ったといわざるを得ない。古くは一九九一年五月、滋賀県の第三セクター信楽高原鉄道(単線)で、同鉄道列車と乗り入れたJR西日本の列車が正面衝突、四十二人死亡の大事故でもJR西日本は自らの過失をなかなか認めなかった。

 〇二年十一月、大阪市淀川区では列車事故で救急作業中の消防署員らが確認せず運転を再開した特急にはねられ、死傷した。脱線事故後に尼崎の現場付近に設置のATSが作動、速度を超過した電車の停車も十件あり、しかも公表せず遺族を憤慨させた。

 この事故ではほかに、検察審査会の議決により強制起訴された歴代社長三人の公判も続く。一連の裁判で遺族や国民の求める真実が解明されることを願う。

 

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