まだ前進とは言い難い。だが、後退や決裂は回避され、歩み寄りの兆しが見えた。メキシコ・カンクンの気候変動枠組み条約会議(COP16)。雲間から差す薄日のような希望の芽を育てたい。
昨年のコペンハーゲン会議(COP15)最終日、主要国の首脳が集まって合意案を作成した。温室効果ガスの削減ルールを定めた京都議定書は二〇一二年で期限が切れる。コペンハーゲン合意は、次の議定書のたたき台になるはずだった。ところが、中南米やアフリカの一部途上国が「作成経過が不透明」と猛反発し、採択ではなく、「留意」という極めてあいまいな扱いにとどまった。
COP16議長国のメキシコは、この教訓に従って「秘密の文書も会議もない」と透明性を強調し、途上国を巻き込みながら、慎重に議長案を用意した。
気温上昇を産業革命前の二度以内に抑える。途上国も削減に参加し、その実行について国際検証を受け入れる。一千億ドル規模の途上国基金を創設する−。コペンハーゲンの内容を踏襲してカンクン合意はまとまった。
ポスト京都の骨格ができただけである。法的拘束力を伴う新ルールの採択は再び先送りになった。しかし、米中参加に道を残したカンクン合意の意味は小さくない。かたくなに拒み続けた国際検証を受け入れて、途上国側が歩み寄りの兆しを見せた。途上国も先進国も、内心では地球温暖化への危機感と交渉継続への期待を共有することが、あらためて確認された。
だからこそ、米中が削減義務を負わない京都議定書の単純延長を全面拒否した日本の立場も、合意内容に反映された。インドやブラジルは合意採択を積極的に働きかけた。中国の強硬姿勢も影を潜めた。新興国も、いつまでも削減義務を逃れられるとは思っていない。温暖化の災厄は途上国側に強く降りかかる。だれも削減ルールの空白期間を望んでいない。
批准手続きなどを考えれば、来年末の南アフリカCOP17が空白回避のタイムリミットだ。
途上国と先進国の歩み寄りを演出した十月の生物多様性条約名古屋会議のように、途上国に対する資金と技術の円滑な移転の流れづくりが、さらなる展開のかぎになる。単純延長論を完全に封じるためにも、年明けの通常国会で、国内対策を裏付ける地球温暖化対策基本法を成立させて、今後の交渉を積極的にリードすべきだ。
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