連合や主要産業別労組は来年の春闘方針を決めた。大半が統一的ベースアップ(ベア)要求を二年続けて見送るが、労働者全体の賃金底上げを目指す。社会に広がる閉塞(へいそく)感をぜひ打ち破ってほしい。
恒例化したスケジュール闘争−と春闘を批判する声は強いが昨年秋の政権交代で一躍“国民労組”となった連合にとって、春闘は労働・雇用政策の実現と労働者の組合加入を促進するための重要な機会である。
連合の「春季生活闘争方針」によると、労働者の賃金は最近のピークである一九九七年から二〇〇九年にかけて約5%減少した。これを立て直すには賃金を着実に引き上げるとともに、非正規労働者の待遇を改善すべきだとする。
具体的には(1)賃金カーブ(定期昇給)の維持に全力を挙げ、賃金制度が未整備の組合は五千円を目安に改善を目指す(2)その上で一時金や諸手当を含めた給与総額で1%程度の上乗せを求める(3)非正規労働者では時間給で四十円程度引き上げていく−という。
産別労組では自動車や電機などが参加する金属労協(IMF・JC)が定昇確保を最優先する方針を決め、流通や外食などで組織するUIゼンセン同盟は給与総額で1%程度引き上げを求めることになった。例外的なのが私鉄総連で、業績回復を理由に月額二千五百円のベアを要求する。
来年の春闘情勢は、二年前のリーマン・ショックや昨年のトヨタ自動車のリコール騒動時などと比べれば安定している。円高の影響や景気に先行き不安感はあるが、二〇一一年三月期は大幅な増益決算となるとの見通しもある。
大手組合を中心にここ数年、これ以上の賃金上昇は日本企業の国際競争力を低下させる、と賃上げ要求を自制する動きが目立つ。だが競争力の源泉である高い技術と労働意欲を支えるには、それに見合った賃金が不可欠だ。
また個別組合では、非正規労働者の時間給を正社員以上に引き上げることに戸惑いも見られる。正社員クラブから脱却し、パートや中小の共闘会議などと連携して労働者全体の利益アップにしっかりと取り組んでもらいたい。
5%台の完全失業率や低所得層の増加など働く者の不安は強まるばかりだ。頼るべき組合の推定組織率は前年と同じ18・5%にとどまる。来年の春闘でどんな展望が開けるのか。国民は連合など組合の突破力に期待している。
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