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児童虐待防止 親権の一時停止もやむを得ぬ(12月20日付・読売社説)

 親権より大切なのは、子どもの命を守ることである。

 児童虐待を防止するため、法相の諮問機関である法制審議会の部会が、親権を一時的に停止できる制度の新設などを提言した。

 政府はこれに基づいて、来年の通常国会に民法改正案を提出する方針だ。

 現行の民法や、児童福祉法など関連法規は、親権を尊重するあまり、深刻化する児童虐待の現状に対応しきれていない。

 子どもの利益を最優先する観点から、実効性を高める改正を行うことは当然だろう。

 2009年度に全国の児童相談所が対応した虐待事案は、4万4211件に上る。10年前の約4倍だ。その中には、虐待通報を受けた児童相談所が子どもを保護しようとしても、父母が親権を盾に抵抗するケースが少なくない。

 施設で保護した後も、子どもを強引に取り戻そうとしたり、病気治療に必要な親権者の同意を拒んだりする親もいるという。

 現行の民法にも、家庭裁判所の決定で父母から親権を剥奪できる「親権喪失制度」はある。

 だが、剥奪期限の定めがなく、親子関係の修復が困難になることから、児童相談所などの現場からは「使いにくい」との声が強かった。実際、08年と09年の2年間で親権喪失が宣告された例は、全国で25件にとどまっている。

 このため、法制審部会は最長2年の期限付きで親権を停止できる中間的な制度を提案した。停止期間中に親の変化や子の心身の状態を見極めつつ、延長もできる。

 厚生労働省も児童福祉法を改正して、児童福祉施設に入所中の子どもに関しては、親権のある親よりも施設長の判断を優先できる枠組みを検討中だ。

 虐待が強く疑われる親からは速やかに子どもを引き離し、保護する。その上で、親を更生させるための相談・支援を行う。状況に応じ、柔軟に対応しうる権限と仕組みを整えることが重要である。

 親が児童相談所をいたずらに敵視せぬよう、保護する担当者と親子の修復にあたる担当者を分けるといった工夫も要るだろう。

 そのためには、今でも手薄な児童相談所の態勢を質、量ともに充実させるべきだ。

 親権の制限だけで、ただちに子どもを救えるわけではない。児童相談所が立ち入り調査権を行使できる要件についても緩和する必要があろう。学校や警察、医療機関そして地域の協力も不可欠だ。

2010年12月20日01時24分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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