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天声人語

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2010年12月19日(日)付

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 今年もそろそろ「数え日」と相成る。年内も指折り数えるほどになった日々を言い、せわしい気分はいっそう募る。そしてここ数日、列島は師走の厳しい寒波に包まれた▼天気予報に連なる北国の雪マークに、今年1月の朝日歌壇の入選作を思い出した。〈「生きてるよ」そのことだけを知らせんと出口をわずか雪踏みにけり〉。山形市の大沼武久さんの一首である。雪深い地では、こうしたご高齢が少なからずおられるのだろうか▼今月初めには、全国で約23万人の民生委員が一斉に改選された。地域に欠かせぬ見守り役だが、委員自身の高齢化も進む。いわば「老老見守り」の様相なのだという。寒地ならずとも冬は心細い。お互い、気の抜けない季節に違いない▼〈齢(よわい)のみ自己新記録冬に入る〉三橋敏雄。誰しも齢は、日々に自己記録を更新している。だが冬は年をまたぐだけに実感が伴う。風邪もはやる。身構える思いはひとしおとなろう▼手元の暦を調べると、きょうは中国宋代の大詩人、蘇軾(そしょく)の生まれた日とある。この人に忘年を意味する「別歳(べっさい)」という一作があって、その一節はなかなか愉快だ。〈嗟(さ)する勿(なか)れ旧歳(きゅうさい)の別れを……去り去りて回顧する勿れ 君に老(ろう)と衰(すい)とを還(かえ)さん〉▼行く年よ振り返らずさっさと去れ。お前に私の老と衰を返すから持って行ってくれ――という意味だ。ずっと繊細だが、日本にもこんな一句がある。〈九十の端(はした)を忘れ春を待つ〉阿部みどり女。「春」を初春ととれば、年の瀬にも味わいは深い。剛と柔の詩句の響きに、どこか励まされる。

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